騒音が人を狂わせる ― 保育園は迷惑施設か?

 人が聞いた音を騒音と感じるのは、単に音の大きさだけではない。騒音の定義は「うるさい音」とか「いやな音」と、漠然とした定義であるため、言うならば、音を聞いた本人の主観によるところが大きい。そこに論理的な理由はなく、脳が感情的に不快に感じた音はすべて「騒音」になるのだ。

■音で人を狂わせる拷問が実在する? 人は騒音をさらに聞きたくなるという不思議な現象

 人間は一度不快な騒音だと認識すると、その音に関して過剰に反応するようになる。それどころか、常にその音がしていないかどうか、聞き耳をたてるようになってしまうのだという。

 またこの人間の性質を利用した拷問が

“水滴の拷問”

 といわれる拷問方法である。

 これは、他に何の音もしない静かな部屋で、拷問対象者に水滴の音を聞かせるというもの。普通の人にとって何の意味もない「水滴の音」だが、拷問対象者にとっては不快な音として無視できないものとなり、続けられると発狂してしまうという。

■子どもの声が騒音と感じたら引っ越すしかない? でも子どもには罪はない

 24時間車が行き交う国道沿いに住んでいても、夜には高いびきで眠れる人も珍しくはなく、静かな住宅街で家の中の冷蔵庫のモーター音が気に触り眠れない人もいる。騒音というのは、法律的には音の大きさで基準を決めるしかないが、日常生活の中で聞こえてくる音を騒音と感じるか否かは、“脳の感情の問題”なのだ。

 冒頭に上げた事件を引き起こした男も含めて、子どもの声を騒音と感じてしまったら、もはや引っ越すしか解決策はないだろう。たとえ保育園がどんな防音措置をとったとしても、人は無意識に騒音を探してしまうからだ。騒音と感じるのは本人の問題であって、子どもには罪はない…と思うのは筆者だけではないだろう。
(文=ごとうさとき/刑事事件に詳しいライター)

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