『となりのトトロ』に因んだ不思議な有爪動物「トトロカギムシ」 体液放出シーンは迫力満点!
■トトロカギムシの生態
トトロカギムシは足の数が「オスで23対、メスで24対」。体長は6cmくらい。ごらんのように、全体的に暗褐色をしていますが、お腹のほうはやや明るい紅色。他のカギムシとはちょっとばかしちがっていて、まさに猫バスさながら、体の表面に毛が生えています。
触覚が一対あって、その下に、なんだか眠たそうな眼が見えます。うーん、これって、虫クンの眼みたい。でも、トトロカギムシは、虫じゃなくて、動物の一種。とはいえ、ほかに仲間のいない孤立種。つまり、カギムシの仲間は、わたしたちのこの地球に棲んでいる、ほかのいかなる生き物とも異なる、おそらくは、遠い遠い昔の生き物のほんと珍しい生き残りらしいのです。
森の妖精を思わせるこの不思議なトトロは、熱帯雨林地帯の湿った土や朽木の中、また岩の下などで一生のほとんどをひたすら地道に過ごすらしく、姿を現すのは雨季だけ。長い間、人の目に触れなかったのは、そのためでしょうか。
最初の発見から7年たった昨年6月、ドイツのライプツィヒ大学のゲオルク•メイヤー、イヴォ•デ•セナオリベイラ両氏の率いるチームが、この生き物を世界に正式に発表しました。電子顕微鏡によるスキャンニングと分子解析をへて、ようやく、ハレの場に立つことができたわけです。地球のあたらしい仲間として認められるには、なかなかものものしい手続きが必要なんですね。元々いたはずなのに…。
ところで、カギムシの仲間は肉食性で、小型の昆虫などを捕食します。そのとき、口のそばの液腺から、白い糸のような粘液を、まるでふなっしーの梨汁攻撃のように、シュッと噴出して、獲物が身動きのとれないよう、がんじがらめにしてしまうのだとか。ユーモラスな見かけとはうらはらに、かれらは、敏捷な小さな狩人でもあったのです。
分布するのは中南米、アフリカ、東南アジアなどで、残念ながら日本にはいません。でも、『トトロ』のバス猫が赤道下のジャングルで、せっせっと狩りに精を出しているかと思うと、ちょっぴり愉快な気持ちになりはしませんか?
(文・構成=石川翠)
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