【死刑囚の実像】綺麗な目をしたIQ63の殺人者がくれた、最後の手紙 ― 兵庫2女性バラバラ殺人事件

■「お礼」で結ばれていた最後の手紙

 実は、高柳は裁判で容疑を大筋で認めたものの、弁護側は高柳が「知的障害者」であることなどを根拠に自白調書の証拠能力などを否定、犯行に至る事実関係を色々争っていた。結果、高柳は「基礎学力は乏しいが、供述の任意性、信用性に影響を及ぼすような知的障害があるとは認められない」(控訴審判決)と判断されたのだが、実際に本人と会った印象として、高柳の知的能力の低さが「基礎学力は乏しい」というレベルにとどまるとは思いがたかった

 面会した1週間後、高柳から届いた2通目のハガキには、〈本件については、「したくて」なったのではない……。〉〈お金のトラブルのすえに……本件がおこった。〉と拙い文章で切々と事件に関する主張が綴られていた。筆者のことを「話を聞いてくれそうな人物」と思ったのかもしれない。正直、高柳の文章は「解読」が困難だったが、最後の一文にはなんとも言えない思いにさせられた。

《いろいろとわがままきいてくださりありがとうございました 少しうれしかった.》

 この礼は「差し入れ」に対するものだろう。地元の高校を卒業後、職を転々とし、2度の離婚歴がある高柳。死亡事故を起こして服役し、坂道を転げ落ちるように殺人犯、死刑囚となったが、そこに至るまでは苦労の多い人生だったのではないか。死刑が確定し、面会も手紙のやりとりもできなくなったが、筆者は今も時折、高柳が身ぶり手ぶりを交えて自分のことを必死に伝えようとしていた面会室での姿を思い出す。

関連キーワード:, , ,

文=片岡健

ノンフィクションライター。全国各地で新旧様々な事件を取材している。著書に『平成監獄面会記』(サクラBooks)、編著に『桶川ストーカー殺人事件 実行犯の告白』(KATAOKA)など。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会記」』(カルトコミックス、作・塚原洋一)が8月8日に発売。
Twitter:@ken_kataoka

片岡健の記事一覧はこちら

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.11.14 23:00心霊
彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.30 23:00心霊
深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.16 20:00心霊
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

【死刑囚の実像】綺麗な目をしたIQ63の殺人者がくれた、最後の手紙 ― 兵庫2女性バラバラ殺人事件のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング11:35更新