街全体にシラミが大発生の極貧生活… 川崎火災でみえた「ドヤ街事情」
【事件記者が綴る暗黒のアナザーストーリー「悲劇の現象学」シリーズ】
川崎市川崎区で9人の死者を出した火災。
未明の業火で焼け落ちた建物2棟は、日雇い労働者や行き場をなくした人々が集まる、いわゆる「ドヤ」と呼ばれる簡易宿泊所だった。東京・山谷や大阪・西成ほどの知名度はないが、火災があった「日進町」も同じような「ドヤ」が集まる「ドヤ街」として知られている。
火災の原因はいまだ明らかになっていないが、「出火直前に付近の住民が男の怒鳴り声を聞いている。男は何者かとケンカしている様子で、『ぶっ殺すぞ』『火をつけてやる』などと叫んでいたといい、放火の可能性も出てきている」(捜査関係者)。
火元の簡易宿泊所はどんな所だったのか。
出入り業者は、「かつては定住先のない日雇い労働者が多かったが、現在は生活保護受給者が利用者の大半を占める。トイレと風呂は共同で、3階まで3帖ほどの個室がびっしりと並んでいる。看板には『1泊2000円』とあるが、利用者の多くが長期滞在者で生活保護費から“家賃”として月額6万円程度を宿に払っている」と話す。
付近には、こうした「ドヤ」が軒を連ねるが、そこで暮らす人々の生活は過酷だ。
「個室にエアコンはついておらず、夏はうだるように暑く、冬は寒い。テレビは課金制で、1時間100円。着替えも満足にない人が多いため、不衛生な環境で、街全体にシラミが大発生したこともあった」(事情を知る区政関係者)
よりひどい生活を強いられているのが、「高齢者住宅」と呼ばれる施設の入居者だ。
精神疾患を抱えて職に就けない人や、持病がある高齢者など、「ドヤ」でも生きていけない人たちの最後の拠り所となっている。その反面、弱者を徹底的に搾取する「貧困ビジネス」が横行する場所ともなっている。
「宿泊費は簡易宿泊所の相場よりも安くて月額5万円程度。ただ、居住スペースは1.5帖ほどしかなく、カーテンとパーテーションだけで仕切られた半個室みたいな部屋がほとんどだ。宿泊費と別に、2食分の食費として約3万円を徴収されるが、出てくるのは食パンひとつに豆腐とか、ひどいものばかり。支給された生活保護費も管理人に取り上げられて自由になるカネは、月々1万円ぐらいしかない」(同)
そんな環境だから、利用者同士のトラブルも絶えない。
「カネの貸し借りで揉めることが多い。ある入居者は、小遣いで馬券を買って、100万円当てたが、次の日には死体となって見つかった。施設の中で息絶えており、病死で処理されたが、みんな『誰かに殺されてカネを持ってかれたんだろう』と噂し合っていた」と話す。
首都圏のベッドタウンとなっている川崎では高層マンションの建設ラッシュが続いている。
「日進町」のドヤ街に住む人々は、真新しいビルやマンションの影で、今もひっそりと日々の営みを続けている。
(文=KYAN岬)
・「ANN NEWS」
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