発禁作品を映画化した問題作、ここに爆誕――。10月3日から渋谷シネパレスなど全国で公開される映画、『木屋町DARUMA』が注目を集めている。
■タブーエッセンスを凝縮した怪作
この作品は、“京都の歓楽街である木屋町で、四肢をなくしたヤクザが、借金取りとして、自らの体型を活かして取り立てを行う”という、あまりにも衝撃的すぎる内容から、多くの出版社に刊行を断られた丸野裕行の小説が原作。
裏社会に蠢く異質すぎる人間たちの生き様を、気鋭の監督である榊英雄のもと、主役である手足をなくした元ヤクザの取り立て屋、勝浦茂雄役に遠藤憲一、その世話を命じられた坂本役に三浦誠己、勝浦に追い込まれる多重債務者の一家に寺島進と武田梨奈など、個性派のキャストが集結し、見事に描き上げている。今回、TOCANAでは主演を務める遠藤氏のインタビューに成功。障がい者、裏社会、多重債務者と、この世のタブーのエッセンスを凝縮したようなこの怪作の主演を、現在ドラマや映画、舞台などで引く手あまたの遠藤氏が受けた理由とは何なのか? そしてこの作品の魅力とは何なのか? 氏に語ってもらった。
■手足がないという制約の中での演技
写真/河西遼
――今回はインタビューをお受け下さりありがとうございます。早速ですが、『木屋町DARUMA』の方を拝見させて頂きまして、正直に申し上げますとかなりエグいというか、すごい映画だなと。
遠藤憲一氏(以下、遠) だろうねぇ。
――今回、四肢を失ったヤクザという役をオファーされた時、率直にどう思われましたか?
遠 ヤクザは今までたくさん演じてきたんだけど、一番表現すべき両手両足が無いっていうのがね……(笑)。この役は「手足を失っても、それでも生きるんだ」っていうのがテーマだと自分で勝手に作っていったのだけど、顔と心の中だけの状態でどこまでそれを表現できるのかチャレンジしてみたかったから、オファーを受けたって感じかな。
――いや、もうスクリーンを通して遠藤さんの情念がこれでもかと炸裂されているというか…。
遠 本当はね、作品っていうのは観てくれる人を喜ばすものだと思うんだけど、今回は作り手たちが夢中になってて、観客をド無視して作ってるんでね。
――観客をド無視ですか(笑)。
遠 だから、できあがった後、改めて観て「これ一体、誰が観るんだよ」って(笑)。まあでも、なかなかそういう実験ができる作品っていうのは無いからね。とりあえず一回はやってみたかったかな。
――なるほど。実際に演じられて、難しかった部分などはありましたか?
遠 やっぱり、表現の制約がきついってことかな。『ジョニーは戦場に行った(※1)』を子どもの頃に観たことがあったんだけど、あれも手足が無いじゃない。あっちは戦争の負傷者がモールス信号だけで意思のやり取りをするっていう、もっと酷い状態だけどさ。ほかにも、日本映画で、『キャタピラー(※2)』っていうのがあって、観てて「制約がきついなぁ」って思ってたんだけど、実際に自分で演じてみるとやっぱり難しいよね。だけど、その中で必死に蠢いてみたり、心の叫び、さらにふと我に返ってる状態とかを表現してみたり……。自分の中では、やれたこととやれなかったことが半々ぐらいかな。
――ということは、心残りのある部分もある、ということでしょうか。
遠 もっと自由に…というか、予算の都合からCGの制約もあったから、映し方によっては手や足が見えないように処理しないといけない部分もあってね。もうちょっと……うーん、でも、あんまりやるとドギツくなるし、いいのかな、あれぐらいが(笑)。