写真/河西遼
■エンケンの不思議体験は…?
――さて、話はものすごく変わってしまうんですが、このTOCANAというのはオカルトなども扱うサイトでして。インタビューさせていただいた方全員にお聞きしているんですが、遠藤さんは何か不思議な体験をされたことってございますか?
遠 オカルト的な話だったら、全くないね。
――じゃあ、あり得ないような偶然ですとか。
遠 そうだなあ…。俺は若い時、一番キツかったのが、高校を辞めるきっかけだったのね。教科書全部入れっぱなしにしたまま夏休みを迎えて、教師に燃やされて。それで、教科書ないから授業で毎時間前に立たされてさ。それで行けなくなって辞めちゃったんだけど。
――それは壮絶な体験ですね…。
遠 でも、そこで高校辞めてなかったら、俺は俳優になってないんだよね。その時は、先生の事を恨んだりもしたけど、後になってみないと、そういう事の意味っていうのはわからないな、とは強く思うよ。
――まさに塞翁が馬ってやつですね。
遠 ホントはもっと、おかしな話の方がいいんでしょ? オバケを見たとかさ。
――いやいや、そういうわけでは(笑)。
遠 でも、さっきの生命力の話じゃないけど、そういうものに惹かれるっていうのは、心が弱っている時なんじゃないかな。見えない時は心が強い時、見ちゃった時は心がとても弱っている時ってことだと思うよ。
――あ、見た事ありますか?
遠 ない。
――(笑)。天下のエンケンの心は常に強い、ということですね(笑)。では最後に、このインタビュー記事を見てくれた読者の方に何かメッセージをお願いできますでしょうか。恐らくコアな方も多いので、結構この作品を観に行く人も多いと思います。
遠 ありがとう! 貴方は凄いよ。よくこの作品を最後まで観てくれた! 貴方は凄い!
――あ、もう観るのが前提になってる(笑)。本日はどうもありがとうございました!
人間の心から生まれるエネルギー――。遠藤氏が語ったテーマは、四肢をなくした男が裏社会で生き抜く、というストーリーからは一見想像しえないものだった。しかし、ある意味では、そうした苛烈な環境こそが、生きる力というものを克明に描き出すのに最適な題材なのかも知れない。氏の言葉通り、万人向けの作品でないことは否めないが、この作品の異質な魅力に触れることで、得るものがあることは間違いないと言えそうだ。10月3日より封切られるこの作品の公開を心して待とう。
(取材・文=阿佐美UMA 写真=河西遼)
■映画情報
『木屋町DARUMA』
10月3日(土)より、渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー
監督/榊英雄 出演者/遠藤憲一 三浦誠己 武田梨奈 木下ほうか 尾高杏奈 趙民和 烏丸せつこ 寺島進 木村祐一 宇野祥平
(注釈)
※1…ドルトン・トランボが1939年に発表した反戦小説をもとに、1971年、トランボ自身の脚本・監督により映画化された作品。戦争で四肢や目、鼻、口、耳を失った兵士の人生を描いた。
※2…2010年に公開された映画。上記の『ジョニーは戦場に行った』と江戸川乱歩の短編小説『芋虫』をモチーフとし、四肢や声帯、耳を失った軍人とその妻の人生を描いた。
※3…2013年に公開されたスタジオジブリのアニメ映画。実在の人物である航空技術者の堀越二郎をモデルに、その半生を描いた。
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