写真/河西遼
■作品が過激すぎてテレビでは放送できない?
――話はちょっと変わりますが、この作品の原作となる丸野裕行さんの小説は、内容の過激さから、多くの出版社が本にするのをためらったという経緯があるじゃないですか。映画の方に関しても、別のインタビューで遠藤さんが「公開できるかどうかわからない」っておっしゃっていたそうで。
遠 俺も公開できないと思ってたからね(笑)。
――そうした、過激な作品について公開をするべきではないという世の中の風潮について、遠藤さんはどうお考えでしょうか。
遠 いや、その通りだと思うよ。やっちゃいけないと思う。
――あ、その通りだと思うんですね(笑)。
遠 ただ、世の中にはさ、ヴァイオレンス映画みたいに人殺しをテーマにするものもあるじゃん? これはそういう殺し合いの作品ではないんだよね。戦争でもないし。ただ、体が不自由の極みだから、表現しちゃいけないっていうのは、世の中にある常識がちょっとお門違いかなって、たまに思う事はあるよね。ただ、パッと見の印象で世の中は回っている部分はあるんで、こういうのは特にグロく見えるっていうのもわかる。手足がないのに生きているし、しかもワーワー騒いで、金を取り立ててるしさ(笑)。
――正直、この作品を観た時、人権団体とかからクレームが来るんじゃないかっていうのをちょっと考えましたよね。
遠 そうなったらそうなったでしょうがないね(笑)。
――以前、スタジオジブリのアニメ作品である『風立ちぬ(※3)』でも、喫煙シーンが多すぎるという理由で、NPO法人からクレームが入った事がありましたし。
遠 あれはちょっとどうかと思うけど、やっぱり世の中には限度っていうものを作っておく必要はあると思うよ。まあ、この作品はギリギリのスレスレって感じじゃないかな。障がい者の人の日常を描いた作品ではないからね。むしろ、それを武器にしてるっていうのが一番キツいところなんだと思う。
――確かに、障がい者の中でもものすごく特殊なケースというか。
遠 だから、大半はクレームくるんじゃないかな(笑)。
――大半はクレーム、ですか…(笑)。ちなみに、そんなギリギリスレスレな作品を、どんな人に観てもらいたいですか?
遠 そりゃ色んな人に観てもらいたいけど、実際観るのはコアな人だろうね。覗く勇気がある人は観てみて、世の中にはこういう作品はあんまりないよって(笑)。
――金曜ロードショーとかでは絶対放送されないでしょうしね(笑)。
遠 そうそう。だから宣伝もできないし。宣伝できない、放送できない、じゃあなんで敢えてそんな作品を作ったんだっていうね(笑)。でも、なんで作ったのかっていうのを興味がある人もいると思うんで。見てくれはエグいことばっかりだけど、グロいことをやるというのがテーマじゃないから。さっき言った通り、人間が生きていくことのエネルギーを描いた作品なんだよね。そこを感じられる人に観てもらいたい。「人間って凄えな」って思ってもらいたいよね。もちろん、こういうことをやれってことじゃなくてね。
――やれって言われてやる人はなかなかいないと思いますので、そこは安心して頂いて大丈夫かと思います(笑)。
遠 今キツい人とかが見て、「なんだ、まだへっちゃらじゃん」とか思ってもらえればいいかなって。