UFOの正体に科学で迫る!都市伝説 vs サイエンス『先生、オカルトは科学で解けますか?』

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『先生、オカルトは科学で解けますか?』(幻冬舎)著者:久野 友萬 定価:1,650円(税込)

 TOCANAでもおなじみのサイエンスライター・久野友萬氏が手がけた新刊『先生、オカルトは科学で解けますか?』が、2025年7月24日に幻冬舎から発売された。幽霊やUFO、都市伝説といった“オカルト”を科学の視点で検証しつつ、物語仕立てで楽しめる一冊で、怖さとワクワク感、そして知的好奇心を同時にくすぐる内容だ。科学的な考え方に触れられるため、子どもの自由研究にもおすすめできるかもしれない。、今回は書籍の中から編集部が特別に気になるエピソード『第二話 UFOの正体』を紹介しよう。(編集部)

 

登場人物

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画像は「『先生、オカルトは科学で解けますか?』(幻冬舎)」より引用
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画像は「『先生、オカルトは科学で解けますか?』(幻冬舎)」より引用

 

「UFOの正体」

「昨日のUFO特番、見た?」

駄菓子菓子で僕たちを見つけるなり、サワがうれしそうに駆け寄ってきた。

「見てねえよ」

ヨージがめんどくさそうに言うと、サワが、
「なんで見ないのよ! 皆神町も出てたじゃない!」
とヨージの足を蹴った。

「僕は見たよ」

この夏休み特番は、僕のお父さんが関係している番組だった。お父さんはオバケとか未解決事件とか変なテーマで映像を撮る監督で、昨日はお父さんが見ろと言うからいっしょに見たけど……「このUFO! これは模型でね、お父さんの友達が作ってる」と聞いてもないのに解説をブッ込んできてうっとうしかった。

「マコトはわかってるね~」

とサワは僕の背中をバンバン叩きながら、番組に出てきた話を続ける。

「UFOを目撃した小学生が、身長1メートルの宇宙人に肩を叩かれたとか、アメリカではUFOに誘拐されて謎の機器を埋め込まれたという事件もあったんだって!」

「宇宙人が出てきたのか! そんなバカな話、信じるかよ……」

ヨージはちょっと怖がっている。

「僕も見たけどさ~」

タクちゃんが笑った。

「CG合成ばっかりでしたね」

「どこがよ」

ムッとしたサワに、タクちゃんが小バカにしたように続けた。

「デジカメが普及してから、心霊写真ってめっちゃ減ったんですよ」

以前のフィルムカメラだと何が撮れているか、現像するまでわからない。そのため、ほとんどの心霊写真は窓ガラスの反射だったり、フィルムを巻き忘れて二重に撮ったりする撮影ミスだったのだ。でもデジカメが主流になり、そういう写真はすぐに削除されるようになったという。

「ところが最近また、心霊写真が増えたんです。それは、CGによる合成が簡単にできるようになったからなんですよ」

UFOも同じだね、とタクちゃん。

(ああ、昨日、お父さんから聞いた話をしたい)

超能力者がUFOを呼ぶシーンで、画面に映っていたUFOはCGではなかった。実はクリスマス用のピカピカ光るやつを巻いた凧で、お父さんが堤防を必死に走って揚げていたとみんなにバラしたい……。

UFOには誰が乗っているのか?

「そんなことないよ! UFOいるよ、お兄ちゃんが見たって言ってたもん」

「ああ、あのイケメンサーファー」

僕は一度会ったことがあった。サワとは年が離れていて、確か大学生だったはずだ。

サワのお兄ちゃんは、まだ日も昇らないうちから沖に出て波を待っていたそうだ。

「そしたらさ、UFOが頭の上を飛んでいったんだって」

サワのお兄ちゃんの目撃情報によると、赤や青に光る物体が回転しながら頭上を飛んでいったのだという。

僕は床屋さんのぐるぐる回ってるやつが飛んでいく姿を想像したが、たぶん違う。

「円盤の形をしてたんだって」

やっぱり違った。よくある円盤形だ。

「幽霊の次はUFO?」

駄菓子菓子の店主、作家先生がタブレット越しに呆れ顔をのぞかせた。

「作家先生、UFOって信じる?」

「そうねえ、UFOとは未確認飛行物体のこと。そう考えると未知の何かが飛んでるかもね。宇宙人かはわからないけど」

「宇宙人じゃなきゃ何なの?」

「地底人?」

「何それ!」

サワがブーとくちびるをとんがらせた。

宇宙人は地球に来ていない?

「サワさんは、UFOは宇宙人の乗り物だって思ってますよね?」

タクちゃんに言われたサワは当然という顔をした。

「当たり前じゃん。あんなの、地球に飛んでないじゃん」

昨日の特番によると、UFOは丸形や円盤形、葉巻形など地球の飛行機とは似ても似つかない形をしている。そして高速で飛び、だいたいコマのように回転している。そして光る。ジグザグに飛んだり、空中で止まったりもできる。

「ドローンじゃないですか? 遠くからだとUFOみたく見えると思いますよ」

タクちゃんの得意げな顔を見ながら、僕は必死に言いたい衝動をがまんする。

(そうなんだよ。番組の前半に出てきた「山梨で目撃されたUFO」は、ドローンにUFOのカバーをしたやつをお父さんの会社の人が操縦してるんだよ。ああ、言いたい)

僕ががまんしている間に、タクちゃんの話はどんどん難しくなっていた。

「光の速度は絶対に超えられないわけ。だから、光の速度で100年かかる星に行くには100年以上かかるんです。そんなの、宇宙人だって死んじゃうでしょ」

「なんでよ、ワープとかあるじゃん」

「あれはアニメとか映画だからできるんです。本当にワープできるか計算した人がいて、それによると宇宙を作るぐらいのエネルギーがいるんだそうですよ」

「じゃあ無理じゃん……」

「そうなんです。恒星間旅行は無理。UFOは宇宙人の乗り物じゃないと思いますね」

サワは黙り込み、タクちゃんは続けた。

「でね、大きな飛行物体が空中で急に止まったり、垂直に飛び上がったりってのは、地球の技術じゃありえないでしょ」

「じゃあ何よ、地底人?」

「だから見間違いかインチキですよ」

バッチバチのサワとタクちゃんに耐えきれず、僕は作家先生の方を見て質問した。

「作家先生、UFOってどうやって飛んでるの?」

「反重力よ! テレビで言ってた」

サワが口をはさんだ。

「反重力なんてありませんよ」

とタクちゃん。

あ~と言いながら、壁際の棚を見ていた作家先生は、「おもしろいもの見せてあげる」と立ち上がり、棚から電子回路のようなものを取り出した。

UFOが浮かぶ原理

「これは昔作ったんだけどね。あんたたちはまだ学校で習ってないかもしれないけど、電気は電灯を光らせたりするだけじゃなくて、力も作り出すのね」

僕たちは何が始まるんだろうとカウンターのまわりに集まった。

「モーターはわかるね? 電気を流すと回転するでしょ?」

僕たちはうなずいた。

「その回転する力をまっすぐ飛ぶ方向に利用すると……」

作家先生は9ボルトの四角い電池を回路につないだ。そして……とレジを開け、1円玉を取り出し、コイルの上に載せた。

「いくよ、離れててね。3、2、1」

作家先生が回路のスイッチを入れると、

パーン‼

1円玉がすごい速さで真上へと飛び上がり、天井にぶつかって弾き返された。

「すげえ、何これ!」

ヨージが叫び、タクちゃんもサワもビックリして口が開きっぱなしだ。僕は床に落ちた1円玉を拾って、作家先生に渡した。

「これが電気の力、ローレンツ力よ」

作家先生は髪をかき上げた。

「確かに円盤形の物体が翼もないのに飛んで、空中で止まって光るなんて、飛行機とは似ても似つかないし、ありえないと思うわよね」

作家先生がメガネを外した。

「だがしかし!」

普段は隠れている大きな目がきらりと光った。

「ありえないから説明できないとは限らない」

作家先生の「だがしかし!」

核融合って知ってる? 私の友人がね、核融合炉を作るチームにいたのよ。

核融合炉とは、太陽が燃えるのと同じしくみで高温を作って、その熱で発電する未来の発電システムのこと。丸い蛍光灯があるでしょ? あれを体育館ぐらいの大きさにしたと想像して。中は空洞で、薄いガスが入ってる、超巨大なドーナツね。

そこに電気を流すことで、プラズマという光るガス状のものにしてグルグル回転させるの。だいぶ簡単に説明したけど、これが核融合炉。

作った核融合炉を設置する実験施設は他の県にあるんだけど、そこまで運ぶ前に、一度組み立ててテストしたのね。動かなかったら、叱られるから。

ものすごく大きいのよ? 何十トンもあるんだから。それがね、電源を入れたら、ボン! 今の1円玉みたいに核融合炉が飛び上がったんだって。おかしいよね。

みんな大慌てで原因を調べたんだけど、なぜ飛び上がったのかわからない。実験施設に運ぶ日は決まっていて時間もない。結局、どうしたかというと、床にネジで留めることにした。空に飛び上がらないように!

「核融合炉の中でぐるぐる回っているプラズマが壁に触れた瞬間、さっきの1円玉と同じようにローレンツ力が働いて飛び上がったというのが真相よ」

計算したら、一瞬だけど何万トンという力が上向きに働いたのだそうだ。核融合炉が浮いても不思議じゃない。

混乱した顔でヨージが聞いた。

「よくわからんけど、さっきドーナツって言ったよな。UFOってドーナツなの?」

あはは、と作家先生が笑った。

「核融合炉がドーナツみたいな形をしているってことよ。でも外側にカバーをつければ、円盤形になるんじゃない?」

「そうか、そうだよな。なる、円盤になる!」

ヨージがしきりにうなずいた。

「ローレンツ力はあつかいが難しくて、人類はいまだにローレンツ力で飛ぶ飛行機は作れずにいる。でも、もしかしたらうまくあつかう方法があるかもしれない。もしそんな技術があったら、核融合炉は空を飛ぶでしょうね」

と作家先生。

「ドーナツのような円盤形の物体がプラズマで光って、ひっくり返らないようにグルグル回転する。調整すれば空中に浮くことだってできるはず」

「UFOじゃん!」とサワが叫んだ。

「UFOは核融合炉なの⁉」

「かもねえ。どこかの国が核融合の制御技術を完成させて、UFOを飛ばしているのかもしれないけどね〜」

駄菓子菓子を出た後、僕たちは夕焼けの空を見上げながら歩いた。

凧でもドローンでもなく、もしかしたらUFOが本当に飛んでいるのかもしれない。

紹介したUFOの他にも、幽霊や妖怪、地震予知、テレパシーなど気になるエピソードが全11話収録されています。続きは『先生、オカルトは科学で解けますか?』(幻冬舎)でご覧ください。

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『先生、オカルトは科学で解けますか?』(幻冬舎)著者:久野 友萬 定価:1,650円(税込)

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文=久野友萬

サイエンスライター。1966年生まれ。福岡県出身。
近著『先生、オカルトは科学で解けますか』(幻冬舎)『ヤバめの科学チートマニュアル』(新紀元社)

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