1700年間、“謎の液体”を出し続ける遺骨。科学も解明できない「聖ニコラウスの奇跡」とは

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By Jaroslav ČermákGalerie Art Praha, Public Domain, Link

 誰もが知るサンタクロースのモデルとなった人物、聖ニコラウス。彼の死後約1700年が経過した今もなお、その遺骨は世界中の人々に神秘と驚きを与え続けている。イタリア・バーリにあるサン・ニコラ聖堂には、彼の頭蓋骨や大小の骨、さらには微細な破片に至るまでが大切に保管されている。

 1950年代、聖堂の改修工事に伴い、第4世紀の司教である彼の墓が1089年以来初めて開かれた。866年もの間、静寂の中にあった骨は墓の中に散らばっており、その底には透明な液体が溜まっていたという。さらに、骨の髄にはまだ湿り気が残っていた。教会関係者はこれを驚くべき保存状態であるとし、この不思議な液体を「聖ニコラウスのマンナ」として認定したのである。

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画像は「Daily Mail Online」より

遺骨から湧き出る神秘の聖水「マンナ」

 この「マンナ」と呼ばれる芳香を放つ液体は、何世紀にもわたって病人の体に塗布したり、飲み物に混ぜたりすることで、奇跡的な治癒をもたらすと信じられてきた。聖ニコラウスの遺骨は紀元343年頃のものであり、ローマ帝国時代の現在のトルコにあたる地域で活動していた初期キリスト教の司教のものである。

 彼はカトリック教会と正教会の双方で崇敬されており、その寛大さで知られている。特に、人知れず他者の靴の中に硬貨を入れるといった秘密の贈り物は有名だ。両親を疫病で亡くした後、彼は遺産を貧しい人々に分け与え、商人や醸造家、そしておもちゃ職人の守護聖人となった。

 有名な伝説の一つに、貧しさから売春を強いられそうになった3人の娘を救うため、窓から金貨を投げ入れて持参金を用意させたという話がある。こうした彼の行いが、後の「ファーザー・クリスマス」や「サンタクロース」の伝説へと形を変えていったのだ。

伝説の司教と「聖なる強奪」の歴史

 聖ニコラウスの評判がサンタクロースという形に変わった一方で、彼の遺骨そのものはイタリアのバーリで今も深い信仰の対象となっている。もともと彼はトルコのミラ(現在のデムレ)に埋葬されていたが、1087年、イタリアの船乗りたちが侵略してくるトルコ軍から遺骨を守るという名目で墓から持ち出し、バーリへと運んだと言われている。著書『The Saint Who Would Be Santa Claus』のアダム・イングリッシュ氏は、これを「実質的な聖なる強奪」と表現している。

 興味深いことに、ベネチアの船乗りたちも後に残された骨の破片を持ち帰り、現在はベネチアのリド島にある教会に保管されているが、不思議な液体を分泌し続けているのはバーリにある遺骨だけだという。毎年5月9日には、かつてミラでも報告されていたように、聖堂の遺骨が甘い香りの液体を放出する現象に合わせて多くの巡礼者が集まる。

科学の目と現代に続く信仰の儀式

 当初、この液体は没薬(ミルラ)や芳香油であると考えられていたが、1925年にバーリ大学で行われた科学的調査では、成分は「水」であると結論づけられた。懐疑派は、これが単に地下室の湿気による結露ではないかと指摘する。しかし、信者たちは外部から水が浸入することは不可能だと反論する。実際、1954年の調査時には、骨自体が液体を発しているかのような状態が確認され、遺骨を包んでいたリネン布も濡れていたと報告されている。

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画像は「Daily Mail Online」より

 現在も毎年5月9日には、大司教が石棺を開け、骨の周りに溜まった「マンナ」を採取する儀式が厳かに行われる。採取された聖水は大きな容器の水と混ぜられ、小さなボトルに詰められて病気や悩みを抱える巡礼者たちに分けられる。

 科学的な説明がどうあれ、歴史と伝説、そして説明のつかない現象が絡み合い、聖ニコラウスの遺骨は1700年の時を超えて人々を魅了し続けている。それは単なる歴史的遺物ではなく、現代のサンタクロース伝説と古代の信仰をつなぐ、生きた奇跡として存在しているのだ。

参考:Daily Mail Online、ほか

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