「不沈のサム」は海の死神か? 3つの軍艦が沈没する中、奇跡的に生き延びた猫の謎

第二次世界大戦中の数ある不思議なエピソードの中でも、特に異彩を放つ物語がある。それは「アンシンカブル・サム(不沈のサム)」と呼ばれた一匹の白黒猫の物語だ。
彼は単なる船のマスコットではなく、3度もの沈没事故から生還した奇跡の存在として語り継がれている。しかし、そのあまりに不可解な生存能力は、彼が本当にただの猫だったのかという疑問すら呼び起こす。戦場の海で、事実はいつしか神話へと変わり、彼は「海の超自然的な存在」として伝説の一部となった。
ビスマルク号の沈没と「オスカー」の誕生
伝説の始まりは1941年5月。ドイツの誇る巨大戦艦「ビスマルク」がイギリス海軍との激闘の末に沈没したときのことだ。乗組員のほとんどが命を落とす中、木の板に乗って漂流している一匹の猫が発見された。
イギリス海軍に救助されたこの猫は「オスカー」と名付けられたが、救助隊員たちはある違和感を覚えていた。彼は決して鳴かず、ただじっと水平線を見つめていたという。「まるでこれが終わりではないことを知っているかのように」――迷信深い船乗りたちは、彼に海の精霊の影を見たのかもしれない。

死を予知する猫? 駆逐艦コサックと空母アーク・ロイヤルでの悲劇
その後、オスカーは駆逐艦「HMSコサック」に乗船する。乗組員にかわいがられた彼だが、ここでも不思議な行動を見せた。空襲が始まる数分前になると、決まって船内の特定の場所に隠れるのだ。まるで爆撃を予知しているかのように。
そして1941年10月、コサック号は魚雷攻撃を受けて沈没。多くの犠牲者が出る中、オスカーはまたしても無傷で発見された。ある士官は「彼はまるで、通り過ぎる乗客を眺めるように私たちを見ていた」と証言している。
次に彼が乗り込んだのは空母「HMSアーク・ロイヤル」だった。船員たちは「彼がいる限り船は沈まない」と冗談を言っていたが、皮肉にもその翌月、アーク・ロイヤルも魚雷の餌食となる。そして3度目の沈没でも、彼は木片の上で静かに救助を待っていた。その瞳は「不気味なほど輝き、異常なほど海を映し出していた」という。

単なる幸運か、それとも海の守護霊か
3つの巨大な鋼鉄の船が沈みゆく中で、たった一匹の猫が一度も傷を負わずに生き残ったという事実は、確率論を超えている。彼には予知能力があったのか、それとも海の霊的な存在だったのか。
引退後、サムはベルファストの船員ホームで余生を過ごしたが、そこでも夜な夜な海に向かって鳴いたり、何かと会話するかのように水面を見つめたりしていたという。オカルト的な解釈では、彼は沈みゆく船を導く「死神」のような存在、あるいは海の守護霊だったのではないかと囁かれている。
アンシンカブル・サム、不沈のサム。彼は本当にただの幸運な猫だったのか、それとも人間の姿をした神々のように、猫の姿を借りた「何か」だったのか。その答えは深い海の底に沈んだままだが、彼と出会った船乗りたちがその「人間のような眼差し」を忘れることは決してないだろう。
参考:Mysterium Incognita、ほか
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2024.10.02 20:00心霊「不沈のサム」は海の死神か? 3つの軍艦が沈没する中、奇跡的に生き延びた猫の謎のページです。猫、英海軍、沈没事故などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで