第二次世界大戦中、隔絶された寒村で起きた最狂に忌まわしい誘拐・失踪事件とは!?

 第二次世界大戦中にスイスの村で村民を戦慄させる連続誘拐事件が起こっていたという。冬の間は豪雪で周囲から隔絶された地となるアルプスの小さな村で何が起こっていたのか――。

■スイス・アルプスの村に英陸軍一個中隊が駐留

 戒厳令下の生活の中では、普段よりも特殊な体験をしやすいのかもしれない。国家運営と国益がすべてに優先する戦時下では、人の行動や出会いも、場合によっては運命を大きく左右するものとなるだろう。

 第二次世界大戦で中立の姿勢を貫いたスイスだが、戦争の影響はこの国の小さな村にも及んでいた。

 英米を中心とする連合国にも、ドイツ、イタリアなどの枢軸国のどちらにも加担していない永世中立国・スイスであったが、ヨーロッパでの戦いが激化してくるにつれ、スイス軍もドイツとの国境の守備を強固化する必要に迫られた。

 戦争を通じてドイツがスイスに攻め込むことはなかったのだが、ヒトラーはスイス侵攻作戦を検討していたといわれている。もし侵攻された場合、スイス軍はドイツ軍の戦力をなるべく削ぎながら少しずつ後退し、アルプスの地形を利用した山岳要塞にこもって徹底抗戦するプランを練っていたという。

 ナチス・ドイツとの“決戦場”となると見込まれている山岳要塞のふもとには人口500人ほどの小さな村があった。決して味方陣営ではないものの、連合国軍側もドイツのスイス侵攻作戦を警戒していて、イギリス陸軍はこの村に一個中隊の兵を送り込んだのである。

イメージ画像 Created with DALL·E

■不可解な盗難事件が続く

 こうしてこの村にイギリスの兵隊たちがやってきたのだが、期待されていた任務はあまりうまく進んでいなかったという。同盟軍でないこともあり、スイス軍との連携はあまりうまく図られず、言葉の問題もあって村人たちとのコミュニケーションにも非常に大きな課題を抱えていたのだ。

 部隊がやってきたのは1943年の冬であったが、降雪と吹雪の季節が本格化すると、村を出入りする道路が寸断され、当時のこの一帯はほぼ周囲から隔絶されたエリアになってしまうのだった。

 運が悪いことに、この年には雪の影響で通信回線も断絶してしまい、村人たちと部隊は限られた食糧と燃料を消費しながら雪解けの季節を待たねばならなかった。こうした窮状にもかかわらず、部隊長は任務を継続し、ドイツ軍の動向に注意を払い、あらゆる犠牲を払ってでも村を守る決意を固めていた。

 数週間後にはますます状況は過酷さを増し、急こう配の高い山に挟まれた村では日照時間もさほどなかったという。

 兵士たちも疲弊していたのだが、この時になって村人たちは通訳を通して部隊がこの村に来てから村の各所で物品がなくなっていると不平を口にしはじめたのだった。防水シート(タープ)、木材などがいくつかなくなっていて、ある村人の家では飾っていたアンティークの刀剣(ハルバード)もある日なくなっていたのだという。

 村人たちは兵士たちの中に盗人がいるのではないかと疑っていたのだが、隊長にはそれは考えられなかった。だが部隊が着任してから続いている不穏な出来事であることは否定のしようがない事実だった。

イメージ画像 Created with DALL·E

■村の子どもが連続して行方不明に

 隔絶されたこの村でいったい何が起こっているのか。次に起きたのは盗難事件とは比較にならない大事件だった。村の子どもが行方不明になったのだ。

 村人たちと部隊は手分けして大掛かりな捜索を行なったのだが、子どもの行方を示す痕跡は何も見つからなかった。この厳しい寒さの中、子どもが1人でどこかに行くのは考え難かった。村には危険な地形をした一帯もあり、雪の中で何らかの事故にあった可能性も考えられた。

 そして続けざまに別の子どもが行方不明になったのだ。この子どもも発見することはできず、こうなると村人たちは事故や遭難などではなく、狼の群れなどの野生動物が近くを徘徊しているのではないかとも考えるようになった。そこで村の男と兵士は夜間に定期的にパトロールを行うことにしたのだ。

 人々の苦労の甲斐なく、この後も村の子どもの行方不明が続くことになった。そして部隊のレジナルド二等兵もまた、ある日バラックの宿舎から姿を消してしまったのである。大人の男でも行方不明になるとすれば、村人たちにとってますます脅威になる。もともと迷信深い村人たちは、邪悪で超自然的な力がその背後にあるのではないかと考え始めた。行方不明になった子どもは7人にもなっていた。

■洞窟での銃撃戦

 さまざまな憶測を呼んでいる連続行方不明事件なのだが、村のどこかに殺人鬼や得体のしれないモンスターが身を潜めているのではないかという噂も流れはじめた。

 そしてある夜、夜間パトロールを行っていた兵士が怪しい人影を目撃することになる。その不審な人影は村人の家の窓辺に立って中を覗き込んでおり、何をやっているのかと兵士が怒鳴りつけると不審者は走って逃げ出した。

 兵士はほかの者にも声をかけて不審者を追った。誰もがこの不審者こそが諸悪の根源であり“犯人”であると確信していた。

 村の果てまで逃げていく“犯人”だったが、かなりの雪が積もっている一帯にくると落とし穴にでも落ちたかのように姿を消した。追っ手が近づくと、そこには洞窟があり、犯人はこの中に逃げ込んだようであった。

イメージ画像 Created with DALL·E

 兵士と村人たちが洞窟の入り口に立ち止まっていると、奥の暗闇から一発の銃弾が放たれた。犯人は銃を持っているのだ。いったんは引き下がって身を隠した一行だったが、全員ライフル銃を手にして洞窟の奥にめがけて一斉射撃を行った。

 一斉射撃をやめたところで、兵士の1人が自主的に様子を見に洞窟の奥へと入っていった。ほどなくして兵士は戻ってきたのだが、ひどく狼狽していた。懐中電灯で辺りを照らしながら洞窟の奥へと入っていった一行が見たのは、一斉射撃で命を失ったレジナルト二等兵であった。そして周囲には行方不明になっていた7人の子どもたちの遺体もあったのだ。その遺体はどれも一部分が切断されており、まるで食べられたかのようであった。子どもたちの身体を切り刻むのに使われたと思われる盗まれた刀剣もここにあった。

 隔絶された雪深い渓谷の村での日々に、レジナルド二等兵は精神に異常を来したのだろうか。戦時中ということもあり警察の捜査もほどんど行われなかったようで、事の真相を知るのは難しく、今となってはなおさらだろう。またそもそも、村人の中の1人しかこの現場に立ち会っておらず、この話もその証言のみからのものである。やがて語り継ぐ者がいなくなればこの話は自然に忘れ去らてしまうのだろう。

参考:「Mysterious Universe」、ほか

 

※当記事は2020年の記事を再編集して掲載しています。

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

仲田しんじの記事一覧はこちら

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

第二次世界大戦中、隔絶された寒村で起きた最狂に忌まわしい誘拐・失踪事件とは!?のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで