核戦争後の「8年間続く飢餓地獄」穀物87%減、最新研究が暴いた“核の冬”の全貌

 現代の軍事技術を背景にした核戦争が行われると世界にどのような影響が及ぶのか――。最新の研究では核戦争後の「核の冬」によって、生き延びた人類は深刻な食糧不足に苦しめられるという。餓死者も出かねない飢饉は最大8年間続くというのだ。

■「核の冬」で世界の穀物生産が87%減少

 ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとイランとの間の対地攻撃の応酬と、1962年のキューバ危機以来の核戦争リスクが高まっているといわれている。この現代において核兵器が使われてしまうと地球上にどのような負の影響がもたらされるのか。

 ペンシルベニア州立大学の研究チームが今年5月に「Environmental Research Letters」で発表した研究では、核兵器使用後の「核の冬」のさまざまなシナリオが、世界で最も広く栽培されている穀物であるトウモロコシの世界生産にどのような影響を与えるかを正確にモデル化している。

 研究チームは煤の放出量が異なる6つの核戦争シナリオをシミュレーションした。

 地域的な核戦争では約550万トンの煤が大気中に放出され、世界のトウモロコシの年間生産量は7%減少する可能性がある。一方、大規模な世界戦争では1億6500万トンの煤が大気中に放出され、トウモロコシの年間収穫量は80%減少する可能性があるということだ。

 世界のトウモロコシ生産量が80%減少すれば当然だが世界的な食糧危機につながることが指摘されており、最も被害が少ないシナリオである7%減少でも、世界の食料システムと経済に深刻な影響を与え、食料不安と飢餓の増大につながる可能性は高い。

 大気中の大量の煤の影響だけに留まらず、核爆発の爆風によるオゾン層の破壊により地表のUV-B放射レベルが上昇することも植物組織にダメージを与え、世界の食糧生産をさらに悪影響を及ぼす。したがって最悪のシナリオでは87%の減少となる可能性があると推定されている。そして最大で8年間続くというのだ。

画像は「Daily Mail Online」より

 この研究ではトウモロコシ生産に限定したシミュレーション行っているが、当然ながら米や小麦などの主要穀物の生産量も減少するのは明らかである。

 穀物生産が87%も減少した世界で生き残る術はあるのだろうか。

 人々は生き残るために個人の菜園や地域の割り当て地で栽培された食料に頼らざるを得なくなる。

 そして比較的低温な環境で生育が良いキャベツ、ハクサイ、レタス、ブロッコリーなどの葉物野菜や、ジャガイモ、リンゴなどの冷涼期作物の生産量をあらかじめ増加させておく必要もありそうだ。

 そして研究チームは低温に適応した生育の早い品種の種子を含む「農業レジリエンスキット」を準備して備蓄することを推奨している。これは「核の冬」のみならず火山噴火などの自然災害の食糧生産への影響を緩和できる可能性がある。

「核戦争が激化すればするほど、生産生態系の劣化に伴い、原始的な生産形態への回帰が進みます」と研究チームは説明する。

 そして核戦争後のシナリオである「核の冬」は、農作物生産の激減により数十億人に及ぶ「計り知れないほどの人命損失をもたらすだろう」と結論づけている。

 人為的であれ自然現象であれ、大規模な災害に対する備えを怠ってはならないが、もちろん核戦争を抑止する国際協力が求められていることも間違いない。

参考:「Daily Mail」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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