数百万人の命を奪った「一人環境破壊マシン」かつて天才と崇められた男が、自らの発明で絞殺されるまで

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http://science.kukuchew.com/2008/10/21/thomas-midgley-jr/, パブリック・ドメイン, リンクによる

 かつて「天才」と称賛され、アメリカを代表する発明家の一人だったトマス・ミジリー・ジュニア。しかし、彼の死から約1世紀が経った今、その評価は一変し、「歴史上最も不運かつ危険な発明家」「一人環境破壊マシン」などと呼ばれている。彼が世に送り出した有鉛ガソリンやフロンガスは、皮肉にも彼自身を含む多くの命を奪い、地球環境に取り返しのつかないダメージを与えた。

天才発明家が生んだ「有毒な解決策」

 ペンシルベニア州で生まれたミジリーは、根っからの発明家だった。コーネル大学で機械工学を学び、1916年にゼネラルモーターズ(GM)の研究チームに加わると、当時の自動車業界を悩ませていたエンジンの「ノッキング現象」の解決に着手した。

 数千種類の化学物質をテストした末、彼がたどり着いたのがテトラエチル鉛だった。これを添加することでエンジンは安定したが、鉛は微量でも人体に極めて有害な物質だ。開発段階ですでにGMの従業員が鉛中毒で死亡したり精神錯乱を起こしたりする事故が発生していたにもかかわらず、ミジリーは安全性を主張し続けた。

 1924年の記者会見では、自らの手に有鉛ガソリンをかけ、その蒸気を吸い込んでみせ、「毎日やっても健康に害はない」と豪語したという。しかし、実際には彼自身も鉛中毒に蝕まれていた。有鉛ガソリンが世界中で禁止されるまでには、それから長い年月を要し、無数の人々が鉛害に苦しむこととなった。

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フロンガスの発明とオゾン層破壊

 有鉛ガソリンだけでは終わらなかった。ミジリーはその後、冷蔵庫やエアコン、スプレー缶に使われる「フロンガス(CFC)」を合成した。当時は「安全で燃えない夢の物質」として絶賛され、彼は数々の栄誉ある賞を受賞した。

 しかし数十年後、このフロンガスが成層圏のオゾン層を破壊していることが判明する。オゾンホールから降り注ぐ有害な紫外線は、皮膚がんや生態系への深刻な影響を引き起こすものだった。もし対策が遅れていれば、地球上の生命は壊滅的な危機に瀕していただろう。彼が発明した2つの物質は、どちらも地球規模の災厄をもたらすことになったのだ。

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自らの発明による皮肉な最期

 晩年、ポリオを患い寝たきりとなったミジリーは、体を起こすためのロープと滑車を使った装置を考案した。ここでも彼の発明家としての才気が発揮されたかに見えた。

 だが1944年11月2日、彼はその装置のロープに絡まり、窒息死しているところを発見された。当初は事故と思われたが、検死の結果は自殺だった。長年の鉛への曝露が引き起こした精神錯乱が原因だったとも言われている。

 数百万人の命を間接的に奪ったとされる「最悪の発明家」は、皮肉にも自らが作った機械によって、その生涯を閉じたのである。

 意図せずして「地球で最も多くの人間を殺した男」となってしまったミジリー。彼の人生は、科学技術が持つ光と影、そして便利さの裏に潜むリスクを、あまりにも残酷な形で私たちに突きつけているのかもしれない。

参考:Mirror、ほか

TOCANA編集部

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