人間を恐れず、逃げなかった優しい巨獣… 体重10トンの「ステラーカイギュウ」が史上最短で絶滅させられた理由

飛べない鳥であるドードーやモア、さらにはニホンオオカミ、ピンタゾウガメなど数多くの生物を絶滅させてきた罪深い人類だが、発見から最短で絶滅させてしまった動物が北太平洋に生息した巨大な哺乳類、ステラーカイギュウだ。発見からわずか27年で根絶やしにしてしまったのである。
■人類が27年で絶滅させた海洋哺乳類
マナティーやジュゴンなどの海牛類は現在4種生息しているが、18世紀にはロシアのカムチャッカ半島沖、ベーリング海のコマンドル諸島周辺の海域でステラーカイギュウ(Hydrodamalis gigas)が生息していた。
ジュゴンに最も近縁のこの種は、生物学者ゲオルク・ヴィルヘルム・ステラーが1741年に北米探検隊に参加していた際にベーリング島で座礁した時に発見された。当時のステラーは、自分の名を冠したこの生物を生きたまま目撃した唯一の科学者になるとは知る由もなかった。
ステラーカイギュウは、今日のマナティーやジュゴンよりもはるかに大きかったと考えられており、体長は最大9メートル、体重は最大10トンに達し、場所によっては脂肪層の厚さが23センチ近くもあったと推定されている。
ステラーは座礁によってベーリング島に10カ月間足止めされ、ほとんど何もすることがなかったと想像される状況で、この島だけでもこれらの大型動物がきわめて多く生息していることから「カムチャッカ半島の住民全員を養うのに十分である」と言及している。

当時ステラーカイギュウの個体数は実際にはそれほど多くなかったことが、今になってようやくわかってきている。またほかにもいくつか種の存続に不利な要因があった。例えばコンブしか食べなかったため、生息域は浅瀬に限られていた。また動きが遅く、水中に完全に潜ることはできなかった。そして人間を恐れていなかったようで、実に捕獲しやすかったと考えられる。
こうしたことから一部の研究では、ステラーカイギュウは人間と遭遇するずっと前から、いずれ絶滅する運命にあった可能性が高いと示唆されている。
それでも最後の引導を渡したのはやはり人間だった。ベーリング海の毛皮商人たちがステラーカイギュウを容赦なく狩り始めたのだ。ステラーによると、その肉も脂身も美味だったという。そして彼らはステラーカイギュウが依存していたコンブの群生地を維持していたラッコも殺してしまったのだ。
彼らの乱獲の結果、ステラーカイギュウは発見からわずか27年後の1768年に絶滅したと考えられている。悲惨な出来事だが、重要なのは人類が海洋哺乳類を絶滅に追い込んだ最初の事例でもあったことだ。

幸いなことに今日では、残存する海牛類が直面している窮状に対する意識が高まり、ステラーカイギュウと同じ運命にさせてはならないという一致団結した努力が続けられている。
マナティーもジュゴンも絶滅危惧種であり、人間活動による脅威から国際的・国内的に保護されているが、両種ともIUCNレッドリストでは「危急種 (VU)」に指定されており、、現在の個体数は一定数いるものの、生息環境の悪化や乱獲、気候変動などにより将来的に絶滅するリスクが高い種に分類されている。くれぐれも残念な結末を迎えたくはないものである。
参考:「IFLScience」ほか
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