沈んだのはタイタニックではなかった? 史上最大の保険金詐欺か、姉妹船との“すり替え”陰謀論

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姉妹船オリンピックと並ぶタイタニック (右) Photo by Robert Welch (Public Domain) | Source: Harland & Wolff collectionWikimedia Commons

 豪華客船・タイタニック号は沈没などしていなくて、実はすり替えられた別の姉妹船だったのか――。“すり替え説”と“保険金詐欺説”を組み合わせた“タイタニック号陰謀論”が注目を集めている。

■沈んだタイタニック号はすり替えられていた!?

 1912年4月14日深夜に北大西洋で処女航海中に沈没した豪華客船・タイタニック号の悲劇はあまりにも有名だが、氷山衝突の事故時にあり得ない速度で航行していたことや、当時の最新技術を駆使して建造されたにも関わらず比較的短い建造期間であったことなどから、いくつもの“陰謀論”も囁かれて今日に到っている。

 そして実に大胆な“タイタニック号陰謀論”が再び注目を集めているようだ。

 タイタニック号には同型船がほかに2隻あり、1年早く就航した客船オリンピック号と、最後に就航したブリタニック号である。そしてある1つの“タイタニック号陰謀論”では、沈没時のタイタニック号とされていた客船は、実は念入りな謀略ですり替えられたオリンピック号でないかという説がまことしやかに語られている。

 タイタニック号の研究家、スティーブ・ホール氏とブルース・ベヴァリッジ氏は、このテーマに関する著作『Titanic or Olympic: Which Ship Sank?: The Truth Behind the Conspiracy(タイタニック号かオリンピック号か:どちらの船が沈んだのか?)』において、タイタニック号を所有するイギリスの海運企業「ホワイト・スター・ライン」社は高額な海上保険金の受け取りを画策してこの謀略を企てて実行した可能性を指摘している。

 ホール氏らによればタイタニック号とオリンピック号を外観から見分けるポイントがいくつかあるという。

「オリンピック号は、タイタニック号と同様に、最初は船首楼の左舷側に同じ14個の舷窓が設けられていたが、後にさらに 2つの舷窓が設けられ、それは1912年3月の時点では設置されていた」と彼らは記している。なぜ竣工後に舷窓を増設しなければならなかったのか。

 オリンピック号は同シリーズ客船の最初に建造された船であり、その名を冠するにふさわしい、まさに旗艦とみなされており、処女航海を含む最初の数回の航海は文句なしの成功を収めた。しかし5回目の航海で深刻な事故に直面してしまう。

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衝突事故の検証写真。右舷側に穴が開いたオリンピックと艦首を粉砕されたホーク Unknown author – “Popular Mechanics” Magazine, December 1911 (Public Domain) | Wikimedia Commons

 1911年9月20日、オリンピック号はイギリス海軍の巡洋艦「ホーク」と衝突し深刻な損傷を負いながらもなんとか港に帰投した。後に裁判でホワイト・スター・ライン社側にこの事故の責任が問われることになった。

 この事故でホワイト・スター・ライン社はかなりの賠償金を命じられたといわれ、加えてオリンピック号の修理にも多額の費用が費やされたのである。そしてこの修理期間中に予約されていたクルーズツアーは当然だがキャンセルを余儀なくされている。

 その後間もなくタイタニック号が竣工したのだが、オリンピック号の同型船であるタイタニック号を見て、同社の上層部に良からぬ企てが浮かんできたとしても、確かに不思議ではないのかもしれない。

 事実として、タイタニック号(という名のオリンピック号)の沈没事故によって、ホワイト・スター・ライン社は保険金を受け取っている。船体に傷の残るオリンピック号であったなら、その金額はおそらくもう一段も二段も低くなっていただろう。

 しかしこの実に腹黒くて残忍な“タイタニック号陰謀論”を却下する声も少なくない。

 歴史家のマーク・チャーンサイド氏は2005年、保険金請求のために船が意図的に沈没させられたという議論を検証を試み、当時の関係者の言葉を引用して「タイタニック号の価格は『750万ドル』で、『500万ドルの保険がかけられていたと聞いています』」と指摘している。IMM(国際海運商事)の米国副会長フィリップ・A・S・フランクリン氏によっても裏付けられており、彼も保険金額が500万ドルだったことを確認しているという。

「もし謀略があったとしたら、保険契約は船の価値全額をカバーするように変更されていたはずです。現状では、ホワイト・スター社は船の価値の3分の2しか回収できていませんでした」とチャーンサイド氏は指摘する。つまり謀略を企てるに値する利益は得られていなかったというのだ。

 さらにチャーンサイド氏は「建造から1年が経っている船を新造船と偽ることは到底不可能だ」と 述べ、両船の間にはいくつかの小さな違いがあるとも指摘している。例えば、 オリンピック号のエンジンのベッドプレートに取り付けられていた鋼板は1911年に追加され、20年代と30年代のさらなる検査でも確認されているが、タイタニック号が英国商務省によって調査された際、そのような鋼板は確認されてはいなかったことなどである。

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建造中のタイタニック Photo by Robert Welch (Public Domain) | Source: Library of Congress Prints & Photographs DivisionWikimedia Commons

 ちなみにホワイト・スター・ライン社は1902年にJ・P・モルガンによって、IMM(国際海運商事)の子会社となっている。アメリカの金融王であったJ・P・モルガンによる“謀略”があったのではないかとの穿った見方もあるようだが、それを裏付けるものは今のところはなさそうだ。

 現在の我々はタイタニック号が就航当時、世界で最先端の豪華大型客船であるとのイメージを映画などから持たされている感もあるのだが、当時のホワイト・スター・ライン社の“主役”はあくまでもオリンピック号であることに変わりはなかったようで、この視点から沈没事故を眺めてみることで何か新たな気づきが得られるのかもしれない。

参考:「Popular Mechanics」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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