空は真紅に、夕日は緑、月は青白く染まった… 1883年、クラカタウ火山が放った“地球史上最大の絶叫”とその爪痕

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 1883年の秋、世界中の人々は息をのむような異様な光景を目撃した。夕暮れ時になると、空と雲は燃えるような真紅に染まり、時には緑や紫の閃光がきらめいた。そして夜には、不気味なほど青白い月が浮かんだのだ。この現象は遠くヨーロッパやアメリカでも観測されたが、その原因は地球の裏側、インドネシアで起きた記録史上最大級の火山噴火にあった。

地球を揺るがしたクラカタウ火山の絶叫

 その名はクラカタウ火山。インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間に位置する火山島である。1883年5月から不穏な活動を続けていたこの火山は、同年8月27日、ついに地球史に残る大噴火を引き起こした。

 その威力は、200メガトン級の爆弾に匹敵したと推定される。これは、人類が爆発させた史上最大の核兵器「ツァーリ・ボンバ」の約4倍ものエネルギーだ。爆発音は310デシベルを超え、64kmも離れた場所にいた船員の鼓膜を破裂させたという。

 この噴火で火山島そのものが粉々に吹き飛び、発生した巨大な津波は、周辺の165もの村を飲み込んだ。死者は推定3万6000人。熱いガスや火山物質の流れも近くの島々を襲い、数千人が命を落とした。しかし、クラカタウ火山の噴火の影響は、東南アジアの一角に留まらなかった。

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クラカタウ火山の噴火(1883年)。パブリックドメイン。Leiden University Libraries所蔵

空が燃え、月が青く染まった科学的理由

 クラカタウ火山が空高く噴き上げた大量の火山灰やガスは、成層圏にまで達し、地球全体を覆い尽くした。これにより太陽光が遮られ、地球の平均気温は数ヶ月にわたって0.6℃も低下した。

 そして、この大気中に漂う微粒子が、光のスペクタクルショーを演出したのである。

 通常、夕焼けが赤く見えるのは、太陽光が地平線近くの厚い大気の層を通過する際、波長の短い青い光が散乱し、波長の長い赤い光だけが私たちの目に届くからだ。

 しかし、1883年の空には、火山性の微粒子(エアロゾル)が満ちていた。この粒子が太陽光をより複雑に散乱・屈折させたことで、赤色はさらに燃えるように鮮やかになり、時には紫色まで加わったのだ。

 さらに科学者たちは、火山性の硫酸エアロゾルが赤い光を強く散乱させることで、補色である「緑色の夕日」が現れたことを突き止めている。そして、この同じ光学効果によって、数週間にわたり「青い月」が観測されたのである。当時のニューヨーク・タイムズ紙は、「街の人々はその異様な光景に度肝を抜かれた…海は血のような赤色に染まっていた」と報じている。

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ムンクの『叫び』も火山が生んだ? 芸術家たちに与えた衝撃

 この異様な空は、芸術家たちの感性をも激しく揺さぶったのかもしれない。有名なのが、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクが噴火の10年後に描いた、あの傑作『叫び』である。

 ムンクは、この絵のインスピレーションを得た瞬間を次のように書き記している。

「私は二人の友人と道を歩いていた。太陽が沈み、突然、空が血のように赤くなった。私は立ち止まり、手すりに寄りかかった。死ぬほど疲れていた。青黒いフィヨルドと街の上に、血と炎の舌のような雲がかかっていた。友人たちは先に行ってしまい、私は不安に震えながら一人で立っていた。自然を貫く、果てしない大きな叫びを感じた」

 この「血のように赤い空」は、まさにクラカタウ火山の噴火がもたらした光景そのものではないだろうか。

 1880年代は、モネやゴッホ、ルノワールといった印象派・後期印象派の画家たちが、光と色彩の新たな表現を模索していた時代でもあった。彼らの作品に描かれた、時に幻想的で、時に不穏な空の色。それもまた、地球の裏側で起きた一つの火山噴火が、芸術家たちの心に残した焼き印だったのかもしれない。

参考:IFLScience、ほか

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