水深6mの濁流が150万人を襲う「聖書の大洪水」ARkStorm 2.0 —— UCLA科学者「起きるかどうかではなく、いつ起きるかだ」

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 今年の冬にも、カリフォルニアの一部が海に沈むかもしれない。

 そんな警告を発しているのは、終末を叫ぶ予言者ではない。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の気候科学者をはじめとする、れっきとした研究者たちだ。

 想定されているのは、30日間にわたって嵐が途切れなく襲い続け、一部地域では水深6mに達する洪水が発生する事態。避難を強いられる住民は150万人規模にのぼるとされる。

「ARkStorm 2.0」——それが、この巨大災害シナリオに付けられた名前である。

「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」——30日間降り続く嵐

 ARkStormとは「Atmospheric River 1,000-year Storm(大気の川による1000年規模の暴風雨)」の頭文字を取った呼称だ。

 もともとは2010年、米地質調査所(USGS)と連邦・州・大学の専門家チームが、行政の防災計画づくりのために策定した想定シナリオである。以来、温暖化の進行に合わせて内容が更新され続けてきた。

 最新版が描き出すのは、「大気の川」と呼ばれる細長い水蒸気の帯が、次から次へと西海岸に上陸し続ける状況だ。それが約30日間続き、膨大な量の雨と雪がカリフォルニアに叩きつけられる。研究チームは、一部地域で20フィート(約6m)に達する浸水を想定している。その区域には現在、150万人以上が暮らしている。

 研究の共著者であるUCLAの気候科学者ダニエル・スウェイン氏は、これはもともと「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」の問題だったとの見方を示す。温暖化以前なら、その「いつ」は数百年先の話だったかもしれない。だが今や、自分が生きているうちに訪れる可能性が十分にあるという趣旨を語っている。

 発生時期を正確に予測することはできない、というのが研究者たちの立場だ。裏を返せば、それは今冬であってもおかしくないということでもある。

実際に起きていた「聖書の大洪水」——1861年、州の中心部が全長483kmの湖に

 ARkStormが絵空事として片づけられないのは、ほぼ同じ規模の災害が約160年前に実際に起きているからだ。

 1861年から62年にかけて、カリフォルニアは「グレート・フラッド」と呼ばれる大洪水に見舞われた。嵐はおよそ45日間にわたって州を叩き続け、穀倉地帯であるセントラル・バレーは全長300マイル(約483km)に及ぶ巨大な湖へと姿を変えたと記録されている。町も農場も道路も、ことごとく水面下に消えた。

 ARkStormのシナリオは、この史実をモデルに構築されている。想定されているのは未知の超常現象ではなく、「前回と同じことが、温暖化した大気の下でもう一度起きたら」という問いなのだ。

 なお「聖書の大洪水」という形容は、旧約聖書のノアの方舟を思わせる規模の水害という比喩であり、宗教的な預言に基づくものではない。数値モデルと過去の観測記録から導かれた、あくまで科学的な想定だ。それでもなお、描かれる光景が終末的であることに変わりはないのだが。

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膨らみ続ける「大気のスポンジ」と、雪から雨への転換

 では、なぜ当時より事態が深刻になると考えられているのか。鍵は「暖かい空気ほど多くの水蒸気を抱え込める」という物理法則にある。

 スウェイン氏は、温暖化した大気を、少しずつ膨らんでいく台所用スポンジにたとえて説明している。サイズが増した分だけ吸い込める水の量も増え、それがカリフォルニア上空で絞られたとき、以前とは桁違いの雨が地上に落ちてくるという理屈だ。

 さらに厄介なのが、降水の「形」が変わる点だという。本来なら山岳部に雪として積もり、春にかけてゆっくり溶け出すはずの水分が、気温上昇によって雨として一気に降り注ぐようになる。

 降水量そのものの増加と、雪から雨へのシフト。この二重の打撃により、シエラネバダ山脈南部の一部では、過去の巨大暴風雨と比較して流出量が200〜400%増加する可能性が指摘されている。山から下る水の量が数倍に膨れ上がったとき、平野部のダムや堤防が受け止めきれる保証はどこにもない。

 ARkStorm 2.0は預言でも終末思想でもなく、行政が備えるために作られた実務的な想定図である。だが、その想定図が描く光景——30日間降り続く雨、水深6mの濁流、避難する150万人——は、聖書に記された洪水の情景とほとんど見分けがつかない。

 そして研究者たちは、それが「いつ」なのかを言い当てられずにいる。数十年後かもしれないし、今年かもしれない。1861年の記録が突きつけているのは、空が牙をむいたとき、人間の側に準備の時間はほとんど残されていないという一点だけだ。

参考:Daily Star、ほか

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