Facebookは68万人の”感情”を無断で操作していた… 企業が扉の向こうで行った心理実験10選

心理実験といえば大学の研究室でやるもの——と思ったら大間違いだ。巨大企業は、従業員や顧客、そして何も知らない一般ユーザーを被験者にした実験を、社外に告げないまま続けてきた。
しかも陰謀論の類ではなく、学術論文や社内文書に記録が残っている話だ。今回は、企業が閉ざされた扉の向こうで実施した10の心理実験を紹介しよう。
画面の向こうで、あなたのクリックは計算され尽くしていた
1. Googleの「41色の青」(2009年) 広告リンクに使う青を41パターン用意し、どの色が最も押されるかを検証。最適な1色を選び出しただけで、年間およそ2億ドルの増収につながったとされる。青は藍より出でて藍より青し、というより藍より儲かる。
2. ディズニーの表情スキャン(2017年) ディズニー・リサーチは150回の試写会で3179人の観客を赤外線カメラで撮影し、約1600万件の表情データを収集した。狙いは感情反応をAIに予測させること。暗闇で泣き笑いしていた顔は、そのまま学習素材にされていたわけだ。
3. Uberの「あと少し」設計(2012年〜) ドライバー用アプリには、収益目標の提示、バッジ付与、次の乗客の自動表示といった機能が仕込まれていた。目標に近づくとやめづらくなる習性を突いた設計で、ログオフする自然なタイミングを消す効果があったと指摘される。ゲームの「あと1体倒したらセーブ」と同じ理屈だ。
4. OkCupidの相性いじり(2014年) 表示する相性パーセンテージを意図的に操作し、本来は相性が悪い相手に高い数値を出す実験を実施。表示される数字が変わるだけで、メッセージのやり取りは増減した。運命の相手は、サーバー側の設定値だったのかもしれない。
SNSは「感情」と「人生」のスイッチを握っていた
5. Facebookの投票実験(2010年) 米議会選挙当日、6100万人に投票を促すメッセージが表示された。友人の顔写真付きバージョンのほうが効果は強く、数万件の直接的な追加投票と、口コミ経由で数十万件規模の波及があったと研究者は推定している。
6. Facebookの感情伝染実験(2012年) 68万9003人のニュースフィードを1週間操作し、ポジティブな投稿とネガティブな投稿の表示量を調整。前向きな内容を減らされた人は、自分の投稿でも前向きな言葉を使う頻度が下がった。感情がネットワークを介して伝染することを、企業が実証してしまった格好だ。
7. LinkedInの5年越しの就活実験(2015〜2019年) 約2000万人を対象に、「親しい知人」と「あまり親しくない知人」のどちらを推薦するかを変える調整が5年間続いた。この間に生まれたつながりは約20億件。弱いつながりのほうが転職に効くという仮説が、壮大なスケールで裏付けられた。
実験室は工場にも、家庭にも、ホテルの一室にもあった
8. ウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場(1924年〜) 照明、休憩、労働時間、賃金体系、監督方法を次々に変えて生産性を測定したところ、条件を良くしても悪くしても生産性が上がった。ここから「観察されること自体が行動を変える」というホーソン効果の概念が生まれた。上司が背後に立つと急に姿勢が良くなるアレである。
9. フォード社の家庭訪問(1914年) 社会学部門の調査員が従業員宅を訪れ、部屋の清潔さ、貯蓄、借金、飲酒、夫婦関係、余暇までを採点。基準を満たせば当時破格の日給5ドルが満額支給され、満たさなければ減給された。私生活が労働条件に組み込まれていたのだ。
10. インペリアル・タバコの「プロジェクト16」(1977年) 16〜17歳の少年少女をホテルの一室に集めて座談会を開き、その様子を監視カメラで観察。喫煙が仲間内でどう扱われ、どんな同調圧力が働くかを分析した。禁煙支援ではなく、未成年消費者の心理を把握するための調査である。
これら10件に共通するのは、被験者の大半が「自分が実験されている」と知らなかったことだ。
もっとも、いまこの画面をスクロールしているあなたが、どこかのA/Bテストのグループに割り振られていない保証もない。企業にとって最高の実験室は、白衣の並ぶ研究所ではなく、我々のポケットの中にあるのだ。
参考:Listverse、ほか
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