瀬戸内寂聴93歳のキュン死にレベルの乙女チック小説がヤバい! SEALDsを題材にした理由は?
作家の瀬戸内寂聴が、『すばる』(集英社)2015年11月号に発表した掌編小説「さよならの秋」が話題だ。
わずか4ページの短い作品は、すべて女性の話し言葉で書かれている。SEALDsのデモに参加したために恋人に距離を置かれた女性が、別れの手紙を送るという構成だ。
“瑛太は笑うけど、デモってる時って体の中が透明になって、自分のことなんか無くなっちゃう”
「さよならの秋」にはこんな一文もある。デモを“デモってる”と動詞的に表現し、若者言葉として使い、また冒頭に出てくるLINEといい、93歳の人間が書いたとは思えない内容だ。
コラムニストの中森明夫は毎日新聞で、“SEALDsを題材とする恋愛小説を初めて文芸誌に書いたのが、まさか現役最高齢作家の瀬戸内寂聴氏だったとは!? しかも、今月文芸誌に載ったどの小説よりも文章が若く瑞々しい。”と絶賛した。
一方で評論家の栗原裕一郎はTwitter上で、“SEALDsを単に時事風俗ネタにした超短編というだけで、この手は新人賞に限らずうんざりするほどある。その中でもレベル低いと思います。”と距離を置く。また、新人賞の下読みで当たったら一次選考で落とすとも明言している。
瀬戸内寂聴は93歳にして、なぜこれほどまでに“少女趣味”“乙女チック”な小説が書けたのか。
昔の瀬戸内を知らない者にとっては彼女のイメージは、頭を丸めた尼さん、戦争反対をとなえる左翼的な人というイメージが強いかもしれない。しかし、彼女が出家をしたのは51歳の時である。
それまでは瀬戸内晴美の名義で小説家として活躍しており、私生活はかなり波乱に富んだものだった。戦時中お見合い結婚し、長女を授かるも、同時期に夫の教え子でもある年下の青年と密会を重ねていた。そして、幼い娘と夫を捨てて京都の青年のもとに駆け込む。だが、この関係は破綻。その後、出版社に務めながら、作家活動を開始する。当初は少女小説や、性描写を含む恋愛小説を多く手がけていた。つまり“恋愛小説”は彼女の得意分野なのだ。同時期には多くの男性とも自由奔放な不倫関係を築き、その体験が反映された作品も多い。
50歳を過ぎ、瀬戸内はこれまでの人生を見つめなおそうと出家し、現在に至る。出家時は、幼子と夫を捨てた過去が問題視され、多くの寺から断れることもあったという。出家後は、煩悩を完全に捨てたと思いきや、大麻で逮捕された萩原健一を更生のため、自身の寺に預かった時は、瀬戸内を含めた尼さんたちが、ショーケンの色気に“メロメロ”になってしまうこともあった。
こうして見ると瀬戸内寂聴は、とことん正直に生きている人と言えるかもしれない。己に忠実であり、わがままでもある。瀬戸内寂聴はいまだ“乙女”なのだ。「さよならの秋」が書かれたのも必然と言える。
(文=平田宏利)
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