■世界的に希少のスラム街
墓地内でゴミ拾いをして、お小遣いを稼ぐ少年たち。墓地スラムから毎日、学校に通えている子供は少ない
その奇妙なスラム街は、フィリピンの首都マニラから数十キロ離れた港町、ナボタスという小さな町に存在するという。まずは情報収集を行い、乗り合いのバスで私は目的地を目指した。何度もバスを乗り換えて到着した町は、特に他の町となんら変わりはない様に思えた。現地の人々に話を聞き、奇妙なスラム街が存在するという住所へ向かうと、着いた場所は、公共墓地だった。
このナボタス市にある墓地自体がスラム街になっているという。私が現場に入ろうとすると、入り口には強面の警備員がおり、内部に入ることを拒否された。彼らの話によれば、数年前に海外の大手報道機関がこの地を取材した際に、住人たちとトラブルになっており、現在はメディア関係者が取材を行うことに非常にシビアになっているそうだ。
世界屈指の大手報道機関がわざわざ海外の記者を送り込むのには理由があった。墓地に住民が住み込んでスラム街と化した場所は世界的に非常に珍しく、まさしく“奇妙な場所”だからだ。現時点で確認ができているのは、このナボタス墓地を含むフィリピンとメキシコなど数えられる場所しか存在しない。
なぜ、住民たちはなぜ墓地に住み込むことになり、どのような生活を送っているだろうか。私は現地の人々の生活を追うことにした。