■今も増え続ける墓地住人と、酷い腐敗臭
現地のコミュニティー代表者の話によれば、この公共墓地に人々がやってきたのは40年ほど前のことだという。現在は約600世帯あり、そこに1500から2500人が生活を営む。彼らは、とある田舎町に居を構えていたが、そこが台風の被害に遭い、避難するために墓地に逃げ込んできたそうだ。しかし、実際に住人に取材を行うと、『仕事の為にやって来た』という人々の声を多く聞くことができた。住人の多くが、土地柄を活かし墓地に関連した職業に就いている。例えば墓石を作る人、葬儀の車を運転する人、遺体を墓石に入れる人、遺骨を取り出す人、などだ。
ナボタスの公共墓地の多くは、マンション型の墓で埋め尽くされているが、そのほとんどはリース制だ。その為、遺族がお金を支払わなかった場合、遺体は再び取り出されることになる。しかし、日本の様に管理体制がしっかりと確立されてない現地では、取り出された遺骨がそのまま通路に放置されることもあり、ときには顔の輪郭が残った骨や、墓石の中に中途半端に衣類を着たまま放置されている遺骨、髪の毛なども無造作に置かれている。そのため、墓地内に足を一歩踏み入れればそこは腐敗臭に覆われる。
そんな墓石の上に人々はバラックを作り、日常生活を送っているのである。バラックもオーナーが存在しており、住人は月に数千円の家賃を支払うという。もちろんトイレはなく、腐敗臭漂う異空間の中で生活を迫られている人々は、衛生環境の問題を抱えることになる。