『adrenamix』をページをめくり進めるうちに、夭逝したフランスの作家、ポール・ニザンを思い出した。
「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。恋愛も思想も家族を失うことも、大人たちの仲間に入ることも、世の中でおのれがどんな役割を果しているのか知るのは辛いことだ」
「怒りを向けよ。きみらを怒らせた者どもに。自分の悪を逃れようとするな。悪の原因をつきとめ、それを打ちこわせ」
ともに、ポール・ニザンが26歳の時に発表した処女作『アデンアラビア』に記した一節だ。この小説が国も時代をも越えて若者に支持されるのは、上っ面だけじゃない、若者が内に秘めた本音を率直に描いたからだ。時は1930年前後。1929年からの世界恐慌が尾を引き、先が見えず、特に若者には辛い時代だった。先が見えず若者に厳しいという点では、いまの日本だって同じだろう?