地雷を探すためだけに生まれた生命 ― 遺伝子組み換えネズミ“スーパーラット”とは?

■最先端の技術を駆使して嫌われ者から一転、ヒーローへ!!

 哺乳類の鼻は、嗅覚を含むさまざまな感覚刺激を伝達する神経細胞である「感覚ニューロン」が発達しており、特定の臭いを探し出すことができる。今回の実験で誕生したラットは、ある臭いにとても敏感であり、遠く離れた場所からの微かな臭いの痕跡をも嗅ぎ分ける能力を持っている。

 ファインスタイン博士と論文共著者であるシャーロット・ドゥハルスト博士は、「動物は外界や体内から発せられる刺激を受け取る細胞、または器官である受容体が人間よりも発達しているため、臭いに敏感なのです」と説明している。

 2人の博士は、このラットに“ネズミ感知器”を意味する「マウセンサー」と名づけ、さらに遺伝子工学技術を提供する同名の会社を設立した。マウセンサー社の研究室は、国防省からの援助を受け、これまでのラットが持つ嗅覚を超える個体を開発し、地雷および工業爆薬であるTNT火薬なども嗅ぎ分けられるよう、さらなる研究と開発に取り組んでいるという。

 数年前、ベルギーのプロジェクトチームがタンザニアに創設した企業「APOPO」は、アフリカ原産のアフリカオニネズミを訓練し、地雷を探知・除去する事業を成功させている。

 また、マウセンサー社では、訓練されたネズミの嗅覚を利用して人の唾液から結核菌を検出する技術の開発も進められている。古くはペストやコレラなどの病原菌を媒介し、“害獣”と忌み嫌われ続けてきたラットだが、遺伝子を組み換え、爆発物や病原菌を嗅ぎ分けるスーパーラットとなって人々を救う日が来るとは、いったい誰が考えただろうか。

 地雷は年間約10万個が除去されているが、それを大きく上回る数が新たに埋められていると言われている。ヒーローラットやマウセンサーの活躍に是非とも期待したい。
(文=清水ミロ)


参考:「Mirror」、「MouSensor」、ほか

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