「現代版・座敷牢」に閉じ込められた“口利けぬ”老婆 ― 悪臭の中で数十年、笑顔で手を叩き…
※当記事は2019年の記事を再編集して掲載しています。
――DV・自殺・暴力団・宗教・統合失調症…事故物件よりも鬱になる「暗黒物件」の闇を“不動産執行人”ニポポが語り尽くす…!

2017年末、大阪府寝屋川市の自宅に長女の遺体を遺棄したとして、両親が逮捕された事件に衝撃が走った。
というのも33歳という若さで命を落とすことになった被害者長女は、監視カメラが複数設置された約2畳というプレハブの隔離スペースに、およそ16年間も監禁されていたというのだ。
発見時の体重は19kg、身長は145cmと極度の栄養失調状態にあり、最終的には食事で栄養を摂取できず体温を保てないことからの凍死。
監禁の理由について両親は「精神疾患で暴れたので監禁した」と語っているが、実際の監禁部屋は少し暴れれば破壊できそうなほど貧弱な掘っ立て小屋だった――。
この事件の発覚には「なぜ16年間も発見できなかったのか」という厳しい言葉も飛び交ったが、付近には廃墟化した空き家が並んでおり、目の前は交通量の多い国道ということで大きな声を出したところで誰の耳にも届かない環境にあった。
当時この痛ましい事件は「現代版・座敷牢」として日本中を駆け巡ったが、このような「座敷牢」のある物件が、差し押さえ・不動産執行の現場へと巡ってくるケースも少なからずある。
そもそも「座敷牢」や「指籠(さしこ)」は主に精神疾患者が親族に発生した場合、人目に触れさせないことで家柄を守るという名目で古くから行われていた風習。1900年から1950年までは「精神病者監護法」として法律でも認められていたという過去を持つ。
裏を返せば築70年超えの良家には今もその痕跡が残されている可能性が高いということ。
もちろん痕跡だけならば良いのだが、今回は執行時にも実際に「座敷牢」として機能していたという珍しい物件を一つご紹介したい――。

首都圏エリアではあるものの駅からは数キロ離れ、都市計画からも忘れ去られたような古い町並みに佇む広大な農家住宅。
敷地内には母屋に分家、厠、井戸小屋、納屋、厩、蔵と並んでおり、立派な大地主家系が崩壊の時を迎えようとしていた。
不動産扱いの建物が敷地内に複数あるため、母屋に分家にと調査のため敷地内を行き来する際、なにやら下水のような汚物臭が漂ってくる。厠が今も使われているのかと思っていたのだが……、実際に今も使われていたのは蔵造りの「座敷牢」。
臭気の発生源はここだった。
「全部鍵は開いてるから、勝手に終わらせといて」
債務者の言葉通り蔵造りの鉄扉は開いており、その扉を開けると牢屋を思わせる格子戸があるという構造にゾッとさせられる。まさに物語で見るような「座敷牢」だ。
格子戸自体には小さな外鍵出入り口が設けられているため、それをくぐり中へ入ると布団とちゃぶ台に小さな流し、それに介護用トイレの置かれた四畳半ほどの生活スペースがあった。
一応電気やエアコンといった設備もあるが、さながら独房といった佇まい。
この座敷牢の住人は80代とも思える老婆、暴れたり大声を出すどころか久々の来客である我々を楽しそうに笑顔で迎えてくれた。
とはいえ、彼女は言葉を持たず、意思表示として手を叩く。
執行官も念の為彼女に今回の差し押さえ・不動産執行の趣旨を説明し、「進めさせてもらっていいですか?」と声を掛けると、パチンと一つ手を打った。
「ご家族に今回の件聞いてましたか?」続けて執行官が問うと、難しい顔をしながら、パチンパチンと二つ手を打った。
この時点で我々は、一つ手を打つのがYES、二つ手を打つのがNOの意思表示なのだろうと認識。
虐待の恐れもあることから、短い時間の中、執行官も次々と質問を繰り出す。
「ずっとここで暮らしているんですか?」 パチン
「何年も?」 パチンパチン
「何十年も?」 パチン
「辛かったり大変なことはないですか?」 パチン
「お食事は大丈夫ですか?」 パチン
「本当に大丈夫ですか?」 パチン
「最後に私に言いたいことや聞きたいことがあれば手を一つ叩いてください」 パチンパチン
執行官の問いかけにも老婆側から助けを求める素振りは感じられなかったため、今回の座敷牢もこれといった報告はなされないまま執行は終えられることとなった――。
債務者はこの「座敷牢」について、終始『離れ』と表現していたが、どうも『離れ』とは考えにくい。
というのも、この老婆が唯一回答する気配を見せなかった質問が次のものだったからだ。
「自由に出たり入ったりは出来るんですか?
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2024.10.02 20:00心霊「現代版・座敷牢」に閉じ込められた“口利けぬ”老婆 ― 悪臭の中で数十年、笑顔で手を叩き…のページです。監禁、座敷牢などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで