コロナ禍終わっても「ステイホーム」の地獄… 4年間監禁された子供たち、庭の草にすら初体験の反応

画像は「Misterios do Mundo」より

 コロナ禍が終わっているというのに、依然として厳格な“ステイホーム”を続けている家族がいた――。親は3人の子供を監禁・虐待していたのである。

■“ステイホーム”という名の我が子の監禁

 地球レベルの感染症禍としてはスペインかぜ以来、100年ぶりに全世界を襲った新型コロナウイルスのパンデミックでは“ロックダウン”や“ステイホーム”といった厳格な行動制限が課されたが、2023年頃からある意味ではなし崩し的に制限が解かれて今日に到っている。

 スペインの都市、オビエドのある家族は“ステイホーム”が公に解除された後も厳格な隔離規則を続け、親が約4年間にわたって憂慮すべき状況下で3人の子供(8歳の双子と10歳の娘)を監禁していた衝撃的な事件が明るみに出た。両親は53歳と48歳のドイツ人夫婦で、家庭内暴力、精神的虐待、育児遺棄の容疑で逮捕された。

 家族の子供たちは学校を欠席し続けており、屋敷の外から子供がいる気配が感じられなことに気づいた隣人からの匿名の苦情をきっかけに、事態は明らかになり始めた。報道によると、父親が食料品や郵便物を買いに行くために時折外出する以外は、一家は2021年12月以来公の場に姿を見せていなかったという。警察は慎重に捜査を開始し、数週間の監視の後、介入することを決定した。

 警察官が家に入ると、恐ろしい光景が広がっていた。そこはゴミで溢れ、マスクが散乱し、異常な量の医薬品が置かれ、実に不衛生な環境にあった。3人の子供はマスクを着けている状態で発見されたが、警察が到着する数分前に母親が子供たちにマスクを着けたという。伝えられるところによると、母親は子供たちが“重病”であると主張し、警察官らに感染の危険を警告したという。

 驚かされたのは救助活動中の子供たちの行動であった。家の庭に連れて行かれた兄弟は、草に触れたりカタツムリを見たりして、まるで自然に触れたことがなかったかのように強い好奇心で反応した。調査員の1人は、彼らが「まるで初めて屋外にいるかのように」深く呼吸していたと報告した。親は子供たちに我が家の庭先に出ることさえ禁じていたことになる。

 警官らはまた、住宅内部に不穏な点があることにも気づいた。子供たちは年長であったにもかかわらず、改造されたベビーベッドで眠り、おそらくおもちゃとして使われていたと思われる変形したフィギアやモンスターの人形があった。蓄積した汚れと換気の不足により状況は悪化し、当局は「病原性」を帯びていると分類した。

画像は「Misterios do Mundo」より

 子供たちは栄養失調の兆候は見られなかったものの、汚れており、極度の社会性の欠如の兆候が見られた。

「彼らは完全に現実から切り離されていました。学校に通っていなかっただけでなく、外の世界との接触が全くなかったからです」と、事件に関わった警察官は語った。

 拘留されているこの夫婦は「コロナ後遺症」を患っていると主張しており、当局はこの症状が健康対策への強迫的な行動につながった可能性があるとしている。新型コロナウイルス感染症に罹患した一部の人々はウイルスが体内から消失した後も倦怠感など長引く症状(後遺症)があることがわかっており、「コロナ後遺症」や「ポストコロナ症候群」などと呼ばれている。

 オビエド警察署長ハビエル・ロサノ氏は、パンデミックは人々にさまざまな影響を与えているとコメントしたが、「未成年者から基本的なニーズを奪うことを正当化するものは何もない」と強調した。

 子供たちは青少年保護施設に送られ、そこで医療および心理的支援を受けている。予備検査により、両親の主張とは矛盾し子供たちには深刻な疾患は特にないことが確認された。

 まだ捜査中のこの事件は、パンデミックが精神衛生に及ぼす永続的な影響や、一部で予防が強迫化する現象について議論を巻き起こしている。一方でスペイン司法当局は、夫婦の法的責任を確定すべく作業を進めており、有罪判決を受けた場合、夫婦は厳しい刑罰を受ける可能性があるということだ。

 今回のコロナ禍では実際のウイルス感染による症状に加えて、一部の人々のメンタルを著しく蝕むことも知られるところとなった。その意味ではウイルス感染の恐怖で我が子を監禁する親がいたとしてもそれほど驚くことではないのかもしれない。しかし歳月を奪われた子供たちにとっては不条理以外の何物でもないことは確かだ。

参考:「Misterios do Mundo」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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