【未解決事件】なぜ犯人は“マンホール”に遺体を遺棄したのか?『多摩市貝取一丁目マンホール内失踪女性殺人』の謎

【未解決事件】なぜ犯人は“マンホール”に遺体を遺棄したのか?『多摩市貝取一丁目マンホール内失踪女性殺人』の謎の画像1
画像は「警視庁」より

 

 1997年1月14日の午前8時過ぎ、多摩市貝取1丁目の路上に設置されたマンホールから汚水が溢れているという近隣住民からの通報が多摩市役所に寄せられた。通報を受けた市役所は、すぐに下水道業者を手配し、同業者は午前10時半頃に現場に到着したという。

 業者は汚水が溢れた原因を探ろうと、すぐさまマンホールの蓋を開けたものの、中からは通常の下水臭とは違う、かなり強烈な異臭がしたため、目視でマンホール内を確認。すると、マンホールの中にマネキンのようなものが見えたことから、遺体である可能性を考慮し、警察に通報した。

 その後、警察による現場検証で、発見されたのはワンピースとセーターを着た状態の、女性の腐乱死体であることが判明。かなり腐敗が進んでいたため、死因は不明ではあったものの、頭と鼻の骨が折れていることが確認された。なお、前述の通り、着衣は確認されたものの、発見までの間に下水によって押し流されてしまったのか、遺体現場付近では女性の靴が見つからなかったという。

 その後の捜査により、この遺体は前年の2月から1年近くもの間、行方不明となっていた保育士の女性・Yさん(当時39)であることが判明し、この事件は『多摩市貝取一丁目マンホール内失踪女性殺人・死体遺棄事件』と名づけられた。しかし、発生から四半世紀以上が経過した現在も、解決には至っていない。

 なお、後に当局が発表したところによると、Yさんが目撃された最後の日である1996年の2月27日、勤務先である北区の保育園を同僚と一緒に退勤した彼女は、最寄の都営地下鉄三田線の本蓮沼駅で同僚と別れた後、電車を乗り継ぐ形で、自宅のある永山駅(京王・小田急)に向かったと推測されている。

 その後の足取りとしては、同駅に到着後、Yさんは自宅へと向かう途中で、市内のスーパーに立ち寄り、18時50分に買い物を済ませると、そのまま帰宅。21時頃に自宅へと訪ねてきた新聞の集金スタッフに対して普通に応対していることが判明しているという。しかし、これが最後の目撃情報であったことから、集金スタッフへの応対が終わった後で、Yさんは殺害され、遺体を発見現場であるマンホール内に遺棄されたと見られている。また、Yさんはその後、親族によって捜索願いが出されることとなったが、不思議なことに彼女の自宅からは、数年前の日記と、750万円分の預貯金が入った通帳が姿を消していたとされるが、不思議なことに預貯金については、なぜかその後も引き出されることはなかったという。

【未解決事件】なぜ犯人は“マンホール”に遺体を遺棄したのか?『多摩市貝取一丁目マンホール内失踪女性殺人』の謎の画像2
現在の事件現場(2019年)。画像は「Google Map」より

 まず、この事件における最大の謎であり、同時に事件解明の鍵を握るともいえることの一つに「なぜ犯人はあのような場所に遺体を遺棄したのか?」という点が挙げられる。というのも、被害者の遺体が発見されたのは、自宅からわずから数百メートルしか離れていない場所に位置し、夜こそ人通りがほとんどないものの、スーパーの目の前ということもあって、昼間はそれなりに人目のあるような場所であったからだ。

 たとえ遺棄場所がマンホールの中という人目につきにくい場所であったとしても、そこに遺棄することは、事件発覚を恐れる犯人からすれば、かなり高いリスクを伴う行為であることは言うまでもない。ましてや、犯行に際して、特殊な工具を使ってかなり力を必要とする作業が必須ともなれば、何らかの事情がなくてはまず実行に移すことはないだろう。

 なお、遺体遺棄の際に伴うこの作業の特殊性から、当局は、工具を所有し、被害者とも交流があった男性を被疑者であると睨んだようであるが(※後に嫌疑が晴れ、結局は逮捕には至らなかったという)、仮にその人物のように、犯人が“マンホール事情”に精通していたのならば、ほかにいくらでも遺棄に向いたマンホールの存在を把握していたはずである。ならばなぜ、犯人は「このマンホール」に決めたのだろうか。

 筆者は長年に渡ってさまざまな事件を取材した経験上、殺人自体を「なんとなく」引き起こしてしまうケースはあっても、その後の死体遺棄を「なんとなく」行うことはほとんどないという見解を持っている。それは、死体遺棄という行為自体が、既に「事件発覚を防ぐ」または「遅らせる」という明確な動機によって行われることが大半であるからだ。そうした観点に基づいて考えれば、犯人がこのマンホールを遺棄場所に決めたのは、必ず「選んだ理由」が存在していたと見るべきなのである。さらに言えば、それが深慮遠謀に基づいたものであれ、些か短慮なものであるにせよ、少なくとも犯人目線では「この場所でないといけない理由」があったことを示唆しているといえる。

 それを踏まえたうえで、改めて目撃情報を確認してみると、事件発生当夜に、マンホール付近で作業員風の男が、ワゴン車を停めて何やらしている姿を目撃した人がいたという。この男こそが、被害者の遺体を遺棄した張本人であると見られているが、その様子から推察するに、「現役」であるか「元」であるからともかく、おそらく本職の作業員であった可能性が高いだろう。無論、被害者との関係は「殺人」を除けば不明だが、少なくともこのマンホールで作業をした経験があり、このマンホールへの遺棄が、当時の状況下において最適解であると判断したことだけは間違いない。となれば、被害者との関係から洗い出すのではなく、まずは「このマンホールでの作業経験者」から犯人を探すのがセオリーといえるのではないだろうか。

 また、これは被害者と犯人との関係を窺わせる要素でもあるが、もしかすると被害者は自宅以外の場所で殺されたために、犯人が被害者の自宅の場所を正確に把握しておらず、事件発覚後の報道などで初めて知ったのではないだろうか。なぜなら、犯行前から被害者宅を正確に知っていれば、その近所に遺体を遺棄するなど、普通ならばまず考えないからだ。しかし、自宅の場所を知らなければ、単に「バレにくい」などの理由で、かつての作業経験から「最適だ」と考えてこの場所に遺体を遺棄したとしても、何ら不思議ではない。なお、犯人は車を使って遺体を運んでいる可能性が高いため、前述の「作業経験」における「気づき」がなければ、他の場所に遺棄することを選んだことだろう。

 いずれにしかり、この事件の解明にあたっては、被害者との関係性や動機よりも、「このマンホールでの作業経験」を重視する形で、容疑者探しをしたほうが賢明であるように思われてならない。いつの日か適切な捜査が行われ、また、この記事をキッカケに有力な情報が寄せられる形で、この事件が解決される日が訪れることを、ただただ祈るばかりである。

情報提供はこちら
警視庁:多摩中央署管内 多摩市貝取一丁目マンホール内失踪女性殺人事件

 

※当記事は2021年の記事を再編集して掲載しています。

文=野島居慎太郎

日本の凶悪事件に詳しいライター

野島居慎太郎の記事一覧はこちら

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

【未解決事件】なぜ犯人は“マンホール”に遺体を遺棄したのか?『多摩市貝取一丁目マンホール内失踪女性殺人』の謎のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング11:35更新