脳が悶絶！ アイデンティティが崩壊する哲学思考実験「テセウスのパラドックス」をマンガで解説【ドヤ理科】

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第5回「私は誰？　テセウスのパラドックス」

漫画：くがほたる
原案：ヘルドクター・くられ

★…第5回「私は誰？　テセウスのパラドックス」おわり…★

●第5回解説「私は誰？　テセウスのパラドックス」

結局、このバトルアックスがおじいさんの斧とは到底思えないんだけど

 

 

 

ふっふーん。やっぱりそう思うでしょ。見た目が全然違う部品ならともかく、仮に元の部品に近いものを使ったとしても、やっぱり別物は別物。すべての部品が入れ替わった時点で別物……

 

 

いや、それしかあり得ないでしょー

 

 

 

これはテセウスのパラドックスといって、「何をもって同じとするのか」を問う哲学的な思考実験なんだけど、近年になって、人工知能や遺伝子操作が発展したことで、科学分野でもその意味が問われる、地味に深い思考実験なのだよ明智君。2017年には「頭部移植手術」も予定されているし（成功するかは不明だが）、今もっともアクチュアルなパラドックスなのだよ。

 

 

わっけわかんない　どういうことなの　教えてホームズ先生。

 

 

 

じゃあ逆に聞くが、仮にこの少年が、壊れた刃とグリップを捨てずにとっておいて、その捨てずにとっておいたゴミを再度合体させたものは、真・おじいさんの斧かな？

 

 

え～・・・　元の部品が１００％ならそれはオリジナルじゃないの？

 

 

 

じゃあ、刃だけ取り替えたときは、もうすでにおじいさんのオノじゃないの？

 

 

 

いやー　それは修理して使ってるんだし、元の部品が残っているなら、まだおじいさんのオノじゃないの？

 

 

 

では聞こう。この新品の刃のついた旧グリップがオリジナルとする。では捨てた刃とグリップを再結合したものもオリジナルと言えないかしら？　となると、それはオリジナルが2本存在することにならない??

 

 

 

ええええ～　オリジナルが2本って　本物が増えちゃだめでしょー

 

 

 

らるちゃんの言うとおりなら、そうなるってことなんだよ。

 

 

 

う～ん　釈然としない　そんなの詭弁だよぉ～

 

 

 

そうなの詭弁なの。世界は詭弁なのである。ーーで、この問題の一応の結論なんだけど、観測者が「オリジナル」と認定すれば「オリジナル」なの。つまり、その「個」というものは、本来流動的であり、一見止まって見える概念だけど実は動いているの。
　数年前にお小遣い貯めてかったエロいフィギュアだって、なんかベトベトした汁が出てきて埃と融合して小汚くなってしまったりするわけで、万物は常に変化していく。それでもお気に入りであれば綺麗に洗って飾るわけだから、その人にとってそのフィギュアはそのフィギュアなわけなのね。つまり観測者が「それ」を認めれば、それが100％別の部品で構成されていても「それ」が「それ」であるといえる。これが「アイデンティティ」と解釈できるわけだ。

 

確かに。双子は同じ遺伝子で見た目も同じだけど、別人だもんなー

 

 

 

らるちゃん、ごく稀に正しいことを言うね。その通り。

 

 

 

ごく稀は余計だ

 

 

 

例えば、らるちゃんがイケメンに愛の告白をされたとしよう。しかしその愛を告白したらるちゃんの60兆個の体細胞は常に代謝して新品に入れ替わっているから、愛された貴方は、皮膚で数週間、臓器だって速いものは24時間から数ヶ月、骨でさえ3，4年で別の細胞にセコセコ新品に入れ替わって別物になっていく、つまり、愛を告白された時点から数年が経過していたら、その愛は「無効！」　ノーカウントなんだ！　はいっ　ノーカン！　ノーカン！

 

夜子ぉおおおおおおお！！！！　

 

 

 

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●キャラクター紹介

喪葉　夜子（もば　よるこ）
みたまま鬼畜眼鏡。正体不明のマッドサイエンティストで保健室の先生。おっぱいでかい。初出は「新版 アリエナイ理科」の巻末マンガ。キャラクターデザインは「京作」。

 

院手　らる（いんで　らる）
女子力に磨きをかけたいお年頃の体育教師。独身。お酒とカラオケと深夜の買い食いが趣味な少し残念系。特技は早着替え。夜子の幼なじみで２歳年下。

 

●作家紹介

漫画／くがほたる
油淋鶏が大好きな駆け出し漫画家。イラスト／マンガのお仕事は常に募集中！
・https://twitter.com/h3r4x

原作／くられ
本サイトの連載「ググっても出ない毒薬の手帳」でもおなじみのサイエンスライター。アリエナイ理科ノ教科書などの執筆活動の他、漫画や小説の科学設定／監修なども手がけ、そうした活動をまとめた本が来年発売予定。詳細はメールマガジンなどで。
・http://www.cl20.jp/R/

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