KKKは白装束でも差別的凶悪集団でもなかった? 『クー・クラックス・クラン白人至上主義結社KKKの正体』著者が明かす組織の変遷とは?

 三角の目出し帽に白い衣装で暴力を振るう秘密結社というイメージが強い「K.K.K」(クー・クラックス・クラン、以下クラン)。だが、噂やイメージが先行するこの秘密結社が、いったいどのような活動を行う団体であったのか、現在はどうなのか、謎に包まれたまま明らかにはされてこなかった。

 そこで今回は、これまで翻訳本以外に手に入らなかった「クラン」についての本邦初となる著書『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体』(平凡社新書)を上梓した福井県立大学学術教養センターの浜本隆三専任講師に、前半では南北戦争直後に結成された第1期クランと、第1次世界大戦勃発直後の1915年に再結成された第2期クランについて、後半ではアメリカ大統領に就任したドナルド・トランプ氏とクランとの関係についても話を聞いた。

――まず、率直に「K.K.K」(クー・クラックス・クラン、以下、クラン)とは、どのような団体なのでしょうか?

浜本隆三専任講師(以下、浜本氏) クランという名前を聞くと、「黒人を差別して暴力をふるい、リンチして殺してしまう」凶悪で差別的な集団と思っている方も多いと思います。

 私自身も公民権運動(1950年代~60年代頃)の時代に暗躍した凶暴なクランの印象を強くもっていました。しかし、一昨年に世に出した『欧米社会の集団妄想とカルト症候群』(明石書店)の執筆にあたり、「クー・クラックス・クラン――人種差別団体の実像」という章を書くために、この秘密結社の歴史について調べてみると、このイメージは一変しました。

 南北戦争後にはじめて結成されたクランは、一時、最大で55万人もの人が入会した秘密結社に成長したんですが、意外なことに、この頃のクランの衣装は、おなじみの白装束ではなかったんです。実は衣装の色は赤色、厳密には緋色をしていました。そして、三角頭巾ではなくグロテスクな仮面をかぶっていたんです。


――具体的にどんな活動をしていたのでしょうか?

浜本氏 まずはクランの活動の全体像を説明させてください。クランの活動は、大きく分けて1866年~71年までの南北戦争直後の第1期、1915年~29年頃の第2期、1950年代から80年代の第3期に分けられます。

 この中で、特に活動が活発化したのは、第1期と第2期でした。第1期は先ほど言ったように、最大で55万人が集い、第2期ではなんと900万人が入会したと見積もる研究者もいるんです。ただ、実際の会員数は400万人から500万人いたといわれています。それでも総人口が1億人であった当時、相当な比率だといえます。


―――第1期と第2期のクランに、なぜ多くの人々が集ったのでしょうか?

浜本氏 第1期と第2期のクランは、活動の原動力が「過去への遡行」にありました。第1期は南北戦争後に、敗れた南部軍の白人によって結成されたんですが、彼らは戦前の南部白人が繁栄した時代を回顧していました。南北戦争後、南部白人の権益は制限されて、代わりに解放された黒人や戦争に勝った北部側に有利な政治が行われようとしていました。この流れに抵抗する目的で活動したのが第1期クランだったんです。すなわち、戦前の南部白人が南部政治を支配していた時代への復古を目指していたんです。ただ、あまりにも活動が過激化したために、組織的な統制力もとれなくなり、結果、1871年には第1期クランの活動が終わります。

 第2期クランは1915年に再結成されました。この組織も、「過去への遡行」を掲げていました。そもそも、19世紀末のアメリカには、大量の移民が押し寄せていました。かれらは東欧や南欧からの「新移民」と呼ばれた人々で、従来のイギリス系や北欧系の移民とは少し異質な文化的背景をもっていました。アメリカにはプロテスタント系のキリスト教徒が多いのですが、この「新移民」にはカトリック系も多く、宗教的にも異質な人々だったんです。

 さらに、アメリカでは産業化や都市化が進展して、社会に大きな変化が生じていました。つまり、社会転換期の時代だったんです。従来の価値観が新しいものに取って代わると、不安を覚える人が出てきますよね。さらに異質な移民が大量に到来するとなると、彼らに不安の原因を探る心理も働きます。第2期クランは、こうした社会転換期に戸惑う人々の不安を集約して巨大結社に成長しました。

 そして、移民が来る前のアメリカ、産業化や都市化が生じる前のアメリカを理想とし、「過去への遡行」を訴えたのです。第2期クランの代表を務めたウィリアム・シモンズも「われわれは前進するのではない、逆戻りするのである」と言っています。この結果、アメリカは移民を排除する法案を成立させます。

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