トリーチャー・コリンズ症候群の“顔面崩壊女” ― いじめ・差別を乗り越え56回の手術で回復の兆し、その全記録
米国ユタ州のケイティ・ウィッカーさん(21歳)は過去にトカナにもしばしば登場した「トリーチャー・コリンズ症候群(顔面の骨40%が欠落した『粘土細工のような少女』――心ない言葉を跳ねのける家族の愛とサポート=アメリカ」の症状を持って誕生した。
■トリーチャー・コリンズ症候群
ケイティさんは出生時に5万人に1人の割合で生まれてくるトリーチャー・コリンズ症候群(約1~5万人の出生に1人が発症するといわれる先天異常症候群。症状としては、頬骨の部分的な欠損や小さな下顎が特徴となる。)と診断され、呼吸を助けるために気管切開を受けた。新生児の時のケイティさんは泣き声が誰にも聞こえないほどかすかで、両親はわが子の様子を確かめるために顔を見つめていなければならなかったという。
ケイティさんの気道には問題があり、言語療法士が手話をコミュニケーションの方法とすることを勧めたこともあり、一家で手話を学んだ。
しかし言語療法士の予測に反し、彼女は気管切開チューブ用のバルブを操作する事で話せるようになった。ケイティさんは5歳になると話し出すと止まらないくらい、とても話好きになったという。
■終わりなき手術――56回もの手術
会話が可能になったケイティさんだが、彼女の顔は成長しても骨が正しく形成されずゆがんでいた。そのため彼女は、自分の腰骨と肋骨を使ってあごを修復する手術などを今までに56回受けてきた。
最近では十分な栄養素摂取のために、彼女の閉じた鼻孔を開く手術を受けた。またほかにも多くの過酷な手術を受け続けてきたのだ。
例えば、母親の子宮内で作られるはずの顔の形成に必要な骨が彼女には生まれつき不足していたので、医師は新しい骨を作るために彼女の顎骨を切って、顎の伸延をしなければならなかった。そのため彼女は8週間もの間、針金で口を縛って閉じたまま過ごす必要があった。そして手術を行った今でも顎に損傷を起こす可能性のあるリンゴ、ステーキなどの硬いものを食べないように注意する必要がある。
■いじめ、そして人々からの心無い言葉
ケイティさんの学校生活は、いじめによって苦難の連続だったと話す。しかし彼女はいじめをする子どもたちを勉強で打ち負かすことで、自分には知性があるということを知らしめたという。
また現在ケイティさんはスキー場で働いているが、人々の中には彼女のことを「低能」と呼んだり、知的障害のある人に話しかけるようにゆっくり話す人がいるという。そして人々の中には無視する必要があるほど残酷な人々や、自分の言葉で彼女を傷つけていることに気づかない人たちもいる。
「君はバカだからここで働くべきでないよ」とケイティさんにわざわざ言いに来た人もいて、彼女はその言葉には本当に深く傷ついたと語る。
「人は私の容姿が他の人々と違っているので、精神面も“違う”のだろうと考えています。でも私は常に『それは間違いだ』と指摘しています」(ケイティさん)
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