「恐怖で3日間眠れなかった」日本人が知らないイスラーム世界の怪談! ジン(悪魔)が出没し…(東洋文化研究所・後藤絵美インタビュー)
■ムスリムにとって異教徒は地獄に落ちるべき存在か?
――ムスリムの人たちは僕たちみたいな異教徒をどう考えているんですか?
後藤 神様を信じない人は基本的に地獄に行くことになっています。実際は、日本人は礼儀正しいし、倫理的な行動をするから、準ムスリムだと言われたりもします。
――ムスリムは心のなかでは「こいつはいつか地獄に堕ちるんだろうな」と思っていたりしないんですか?
後藤 そこまでではないですよ。地獄に堕ちるかどうかは自分たちもボーダーラインにいるし、目の前の人も改宗するかもですし、神様がなにを見ているか、何で判断するかはわからない。私自身は、ムスリムの人と話していて、そこまでの悪意を感じたことはありません。
――イスラームで語られる地獄はどんな地獄ですか?
後藤 基本的には「火獄」と言われ火の池地獄です。地獄付きの天使がいて、人間は首にカセや鎖を付けられて、熱湯や炎の中をひきずり回されます。コーランには、皮膚が焼け落ちても新しい皮膚があらわれ何度も痛みを味わうだとか、下着はタールでできていて顔は炎に覆われるだとか、地獄の食べ物は胃の中で溶けた銅のようにぐつぐつと煮えたぎるという表現があります。
罪の重さによって、地獄にいる期間が違います。異教徒・姦通をした人・殺人者はずっと地獄にいないといけません。徳が高い人は最初から天国にいきますが、罪を償った後に最終的に天国にいくという人もいます。天国は美しい楽園で、絹や錦の衣服を着て美味しい食べ物やお酒を味わい、男性は「目の大きな色白の乙女」と結婚することができる場所だとされています。
――それはイスラームで救われたくなるかもしれません。ちなみに現世でのお墓はどうなっていますか?
後藤 お葬式では参列者は黒い服を着て、コーランをよみ、故人を偲びます。ムスリムは来世で復活すると信じていて、体がないと困るので、土葬にしますね。火葬は地獄を想起させるのでとくに嫌がられます。日本で亡くなったムスリムのために、国内にもいくつか土葬できる墓地があります。現世の死はあまり大ごとにせずに、来世でみんな集まろうという意識があります。来世というのはこういうことです。現世では、必ず最後の日がくる。そのとき人間は全員死んで、次の瞬間、全員が復活します。復活した人間たちは皆でぞろぞろと神様の前に行って、順番に審判を受けることになります。
世にも恐ろしいイスラームの地獄も垣間見ることができた。日本とイスラーム世界では、女性の権利に対する考え方や風習・風俗の違いはもちろんある。だが、世界の人口の20〜25%を占めるムスリムとは、これから触れ合う機会も増えてくるだろう。このインタビューをイスラーム理解の一助としてほしい。
(取材・文=松本祐貴)
◆後藤絵美(ごとう・えみ)
東京大学日本・アジアに関する教育研究ネットワーク特任准教授、東洋文化研究所准教授(兼務)。専門は西アジア・中東地域研究、イスラーム文化・思想、服飾文化史。東京大学総合文化研究科博士課程修了。学術博士。2003年から5年に平和中島財団奨学生としてエジプトに留学、カイロ・アメリカン大学女性・ジェンダー研究所に研究員として在籍。2015年から現職。著書『神のためにまとうヴェール―現代エジプトの女性とイスラーム』(中央公論新社)『イスラームのおしえ』(かもがわ出版)など多数。
◆松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。編集者・ライター・世界のマイナー酒・居酒屋研究家。大学在学中からライターをはじめ、その後、雑誌記者、出版社勤務を経てフリーで活動する。テーマは旅、酒、サブカル、趣味系など多数。著書『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)が発売中。・ブログ~世界一周~旅の柄:http://tabinogara.blogspot.jp/
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