人間は暗闇にひとりぼっちだと48時間眠り続けることができる! 2人の体験者から判明、地底生活の実態とは?
■太陽の光を浴びないと最長で48時間睡眠になる
この謎を解く鍵は睡眠時間にあった。2人の洞窟生活の行動記録を詳細に分析してみると、暗闇の洞窟内では一度に30時間も連続して眠っているケースもあったのだ。そこで重要なのは、本人の感覚では短時間の“うたた寝”のように感じられているという点。つまり、主観的な1日=24時間が、実際は30時間にも40時間にも伸びているのだ。確かに一度に丸1日以上も眠れば日付の把握が困難になるのも当然である。
これは我々の“生体時計”が太陽の光を浴びないと徐々に狂ってくるからであると説明されている。地球の地表面で暮らす我々は自然光を浴びることによって体内時計の“時刻合わせ”をして、睡眠パターンを形成している。しかし“地底人”生活では時刻合わせをする機会がなく、また1日を24時間に設定する必要性も失われてくるのである。その後の研究で、“地底人”生活を続けていくと最大に一度で連続48時間の睡眠が可能になるというから驚きだ。
洞窟から出てきた2人はその後すぐに病院に運ばれてメディカルチェックを受けたのだが、一時的な色覚異常とこの睡眠の乱れが見られただけで、健康面ではまったく問題はなかったという。事実、それらの異常は“社会復帰”後に自然に元に戻った。
米ソが熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた冷戦真っ只中の時代背景も、この“人体実験”を後押しするものになった。この2人の洞窟生活の世界記録達成の後にアメリカの宇宙開発に勢いがつき、1969年7月の人類初の月面着陸を成し遂げることになる。
この実験を監修したのはフランス人の洞穴学者のマイケル・シフレ氏なのだが、1972年には同氏自身がが米テキサス州の洞窟でなんと6カ月に及ぶ単独の連続洞窟生活を達成して世界記録を塗り替えている。
「肉体的には何の問題もなかったが、精神的には地獄だった」と後のインタビューでこの時の洞窟生活を振り返るシフレ氏だが、半年にも及ぶ洞窟生活を成し遂げられたその裏には、ある秘密が存在した。なんとシフレ氏は、洞窟の中にいたネズミにジャムを与えて飼い、ペットにしたのだった。この“ペット”が孤独な洞窟生活の心の支えになったという。しかし不幸なことにある日、陶器の丼でこのネズミを捕まえようとした際に丼のフチでネズミを押し潰して死なせてしまったという。暗闇の中ならではの悲劇だろう。
奇しくも、前出の女性探検家のラウレス氏もまた、実は洞窟生活中に白いネズミとのコミュニケーションがあったということだ。このネズミとの交流があってこそ、3カ月近い孤独な洞窟生活が続けられたことを彼女はAP通信に話している。やはり人間は孤独に弱い生物であり、ひとりぼっちの環境ではペットがきわめて重要な役割を果たすことが確認される実験にもなったのだ。このペットの役割をAI搭載ロボットが埋め合わせをすることができれば、まさに近未来の宇宙旅行はSF映画の設定の再現ということになるのかもしれない。
(文=仲田しんじ)
参考:「Science Alert」、「The Atlantic」、ほか
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2024.10.02 20:00心霊人間は暗闇にひとりぼっちだと48時間眠り続けることができる! 2人の体験者から判明、地底生活の実態とは?のページです。健康、睡眠、人体実験、仲田しんじ、闇、洞窟、地底人、孤独、自然光などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで