月刊『ムー』に秘められた“知られざる精神”を『ムー』創刊顧問・武田崇元が暴露! オカルト界重鎮インタビュー!

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 もともと、急進的な左翼運動家だった武田さんは、オカルトに左翼的なカウンターカルチャーや革命思想を接続していったわけです。そこから生まれた言葉が「霊的ボリシェヴィキ」だったと。

「まあ、それは『復刊地球ロマン』の編集長をやっていたときも、のちに『出口王仁三郎の霊界からの警告』を書いたときも、一貫して僕の根底にあったものなんだ」

 でも、そこで語られる神道霊学や古史古伝の原典は、八幡書店で復刻されていった。武田さんは、それらの超古代史の文献を無修正ハードコアなもののまま、オカルトファンたちに提供し、虜にしていったじゃないですか。

確かに、『ムー』では日本のオカルトを強く出していきたかった。毎号というわけにはいかないけどね。初期は、竹内文献はこういう読み方をすると、天皇家以前の隠された歴史がわかりますとか、そういう風に書いていた。そういう物語がだんだんとひとつに繋がって、読者も喜んだんだよ」

 なるほど、超古代史は物語性の宝庫というべきなのでしょうか?

「それだけじゃない。僕は『UFOと宇宙』の編集長もやったことがあるけど、その頃は『UFOを見ました』とか、『誘拐されました』とか、そういうのだけだった。でも、『ムー』の時代になるとアメリカからMJ-12とか、陰謀論的な話が次々に入ってきて、UFOもスケールの大きな物語になっていったじゃない」

 アメリカでは、陰謀論の文脈でUFO神話が拡大していきました。武田さんが仕掛けた出口王仁三郎の復権についてはどうでしょうか?

『ムー』における物語性は、超古代史、UFO陰謀論ときて、もうひとつの大きな柱が、出口王仁三郎だった。王仁三郎さえ出しておけば、物語は作れるみたいな。王仁三郎の大本運動というのは、いわゆる民衆宗教といった枠組ではとらえきれるものではない。特に王仁三郎に注目するなら、彼の思想は超古代史みたいな、日本の古代から連なる秘教的なものに溢れていたんです。1983年に僕が書いた『出口王仁三郎の霊界からの警告』という本は、大本教を民衆宗教として語る、日本の宗教学の権威、村上重良のような見方を大きく変えるものだった。確かに、戦後の大本教は、戦前にとことん弾圧されたことから、平和宗教という側面を打ち出していったわけ。だから、世界連邦運動や原水禁運動とかとかかわって、ビキニ環礁の核実験で第五福竜丸が被爆したときも、人類愛善新聞でその問題を取り上げて署名を集め、国会に行ったりもしている。でも、大本はどちらかというと、右翼のペイガニズム宗教なんだよ。だから、昔は違っただろうといいたい」

 武田さんの奥さんは、大本の方ですよね。

そうね。まあ、村上重良の捉え方では、出口なおというのは貧しい主婦から出てきたのに対して、王仁三郎というのは国学を学んでいて、ナオを捻じ曲げて国家神道に近づいていたみたいな言説があった。つまり、村上にいわせれば、王仁三郎は軍部に担がれたと。でも、王仁三郎はもともと右翼でしょ。大本を捻じ曲げていったのは村上の方で、確かに王仁三郎にはファシズムの要素があったけど、ファシズムがなんで悪いのって」

 戦前の最も過激なオカルト思想を理解するためには、戦後民主主義的な感性ではとらえきれないものがあるんですね。

「戦後的な価値観では、民主主義 VS ファシズムにみえるけど、戦後の左翼の人たちがファシズムだと言って、切り捨てたいところが、実は左翼よりもボリシェヴィズムに近いところがあったんじゃない」

 極左と極右の狭間にオカルティズムを発見する瞬間ですね。武田さんの「霊的ポリシェヴィキ」という言葉で表されるような。

「戦前、大本は表面的にはかなり国家的な言説を出していたけど、その根底には『霊界物語』に書かれているように、社会主義的な財神の共有であるとか、失われた神々の復権があったりするんです」

 日本の古来から続くオカルト思想が大本や王仁三郎を通じて蘇っていったということですね。

「たとえば、戦前に王仁三郎が立ち上げた昭和神聖会には、いろんな人が集まっていた。王仁三郎がトップだったけど、二番目の副統管は、内田良平という黒龍会の中心人物で、九州の右翼の親方です。参謀本部と呼ばれる軍隊組織みたいなところは下井春吉というイタリアのフィウメ占領のときに電令をやって、向こうのファシストから名誉伍長の位をもらった人がやっていた。彼はムッソリーニとも親しくて、日本に戻ってきて、王仁三郎の下についた。その彼が、王仁三郎の車の前にオートバイを2台つける。そのことがのちに不敬罪ということになって、第二次大本事件につながるけど。それは天皇の真似じゃなく、ムッソリーニの真似だったんだよ」

 ここでムッソリーニも出てくるという。

明治時代に神道が国家宗教になっていく過程で、日本政府も古(いにしえ)の復権を目指していた。でも、彼らのイメージは律令時代であって、宮廷の雅楽を取り入れたりしていく。それに対抗するように、王仁三郎は、ペイガン的な古の復権を目指しているから、八雲琴という楽器を持ち出してくる。それは四国の人がいづも神社で神がかりで授かったという楽器で大本教の祭式に取り入れていく。つまり、古のビジョンというものを国家と大本で奪い合ったような構図があったんです。さらには、ムッソリーニのファシズムにも、神々の復権があったんです」

 イタリアのファシズムにも霊的なところがあったと?

「そう。イタリアのファシズムは、未来派、伝統主義者、社会主義転向組から成り立っていて複雑だけど、そこにユリアス・エヴォラという思想家がいた。ムッソリーニは結局カトリックと妥協して、第七条約を結ぶけど、エヴォラはカトリックこそが撲滅の対象で復権すべきはローマの神々だと主張していた。当時としては、エヴォラの思想は極端すぎたけど、戦後には彼は極右のグルになっていく。そして、何よりもびっくりさせられるのが、1928年にエヴォラが著した『ペーガン帝国主義』がモスクワのレーニン図書館の開架式の棚にあって、それをアレクサンドル・ドゥーキンがロシア語に翻訳して、1980年に地下出版しました」

 話はロシアにまで繋がっているんですね。つまり、王仁三郎が大本で実行しようとした霊的革命としての神々の復権は、イタリアではユリアス・エヴォラ、さらにロシアではアレクサンダル・ドゥーキンがやろうとしていることに通じると。

「そして、アレクサンドル・ドゥーキンはロシア体制側の人間として、プーチンの世界戦略の参謀的な役割を務めるほど。彼は、国民ポリシェヴィキ党を率い、ネオ・ユーラシア主義を唱え、それを支持したのがプーチンだった」

おお、武田さんが『ムー』創刊の頃から作り上げてきたオカルトの物語は、空想ではなく、もっとリアルで実践的なものとしてロシアで成長を続けているんですね。

現在のロシアはオカルト全盛です。たとえば、アナスタシア運動と呼ばれるものは、ある実業家がアナスタシアと名乗る森の精霊のような存在からメッセージを受け取り、それを本にしたら、ロシアで大ベストセラーになっています。そこでは、人間一人に1ヘクタールを与えれば、それで全てまかなえるとか、シベリア杉に宇宙の霊気を蓄えるとか、アナスタシアのメッセージから、そういうアイディアが生まれています。さらにアナスタシア運動もプーチンに支持されているという。ロシアの新しい精神主義はすごく活発になっているんです」

グローバリズムやアメリカ的な価値観にカウンターの立場をとるためにも、ロシアを含むユーラシアに伝われる神々を復権し、独自の価値観や世界観を作っていこうということですかね。

「そうだね。現在の『ムー』でもロシアの記事があったら、そこら辺も意識して読んで欲しいな」

 なんか興奮します。この混沌とした21世紀に、世界的にはますますオカルト的なものが復権しているんですね!
(TOCANAスペシャル・武田崇元インタビューは次回につづく)

武田 崇元(たけだ すうげん)
1950年生まれ。灘高等学校卒業。東京大学法学部出身。伝説的オカルト誌『復刊地球ロマン』(1976~1977)の編集長として政治的ラディカリズムを触媒とする秘教的伝統の更新を企て、学研『ムー』の創刊に顧問として参画、神道霊学書籍の発掘を目的とする八幡書店を創立(1981年)、1983年には『出口仁三郎の霊界からの警告』(光文社)がベストセラーになるなど1980年代のオカルトブームに決定的な影響を与える一方で、立体録音ホロフォニクスの紹介やブレインマシンの開発など電脳シャーマニズムの旗手として当時の対抗文化全般に大きなインパクトを与えた。著書:『新約 出口王仁三郎の霊界からの警告』(学研)、『出口王仁三郎の大降臨』(光文社)、『奇跡のロックバランシング』(今日の話題社・翻訳)など。
・八幡書店 https://www.hachiman.com

ケロッピー前田
1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランス。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、現代アート、ハッカー、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。著書に、前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)、『クレイジートリップ』(三才ブックス)など。昨年は、TBS人気番組『クレイジージャーニー』でノルウェーのボディサスペンション世界大会を紹介し、過去の番組で反響の大きかった“極限の光景”ベスト10にて、第一位に選ばれている。

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