元エロ本編集者が語る「バイブレーター」が入ったバッグで職質を受けてトンでもないことになった話
2021.10.18 12:00
スイッチを入れた。
途端、ブイーンブイーンと音を立て、紫の極太バイブはうねりながら、ゆっくりと回転した。
私の記憶に、そばを通りすぎる人影はなく、目の前の大通りを走る車もなかった。ただ、青みがかった静かな夕暮れの路上に男が3人突っ立ち、音を立てうねる紫色のバイブレーターを見つめているばかりであった。時間にして20秒ばかり。
それで私は解放された。
「いったいなぜ、動かしてみろなんて言ったんだろう。珍しかったのか?」
それもあったろう。が、電車の吊革を握りながら、ようやく気付いた。
「ああ、そうか。あいつらもしやと思ったのか」
数日前に、神楽坂のマンションから皇居へ向けて、極左の某党派が手製のミサイルを発射して大騒ぎになったのだ。
そう、刑事たちはバイブレーターを、新型のミサイルじゃないかと疑ったのである。
私はさきほどの珍奇な情景を思い出し、笑いをかみ殺した。
もちろん翌日、自粛もへったくれもなく、紫色の極太バイブレーターは存分に音を立ててうねり、回転したのであった。
エロ本編集者になって2月目ほどの出来事である。
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