エルサルバドルに出現した「ビットコインシティ」の最悪の未来と根本的な欠陥とは?
それでもスマホを眺めるとビットコイン口座の残高は0.1ビットコインで悪くない。5年後には1200万円と増えているはずだ。しかしあなたは気づく。仲間うちではケチで有名なホセのスマホには0.8ビットコインが収められている。
ホセは最初のうちは鉄道に乗って建設現場に来ていた。ところがそのうち毎日片道1時間かかる距離を歩いて通うようになる。仕事が終わったらすぐにアパートに戻り、家でちびちびと安いワインボトルを3分の1だけ飲んであとはスマホをいじって過ごしているらしい。
法定通貨の価値が5年で20倍に上がる経済は実はハイパーデフレ経済である。その世界ではホセのように極力お金を使わない暮らしをしたほうがはるかに儲かる。5年後、あなたの財産が1200万円で、ホセの財産が1億円という格差が生まれるのはホセが倹約生活を続けた結果だ。
その事実はやがてビットコインシティの住民全体に伝わり、ビットコインシティでは誰もがなるべくお金を使わないように生活をするようになる。みんなスペインバルで食事をしないどころか、コンビニでも最小限の買い物しかしない。こうしてビットコインシティでは時がすすめばすすむほど経済活動が停滞する。
そうなると世界からの投資は止まる。経済発展しない都市に巨大なビル群を建設しようとする投資家はいない。近い将来廃墟になることが確実だとわかってくれば、当初集まった投資家は潮が引くように消えていく。そのときのビットコインシティにはスマホを奪われたホセの射殺死体が転がっているだけかもしれない。
結局、儲かったのは一番最初にビットコインシティに乗り込んでビットコインで給料を受け取った人たちだけだった?
いやそもそもそんなことしなくても、日本の建設現場で働きホセのようにケチケチ生活して、たまったお金を全部ビットコインに替えておけばエルサルバドルに行く必要さえない。ビットコインシティ構想はこのような根本的な欠陥を抱えているのだという。
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