人類の世界観をひっくり返す「7つの哲学的思考実験」が意識高すぎる! メアリーの部屋、快楽機械、沼男… あなたの答えは?
■スワンプマン
1987年、アメリカの哲学者ドナルド・デイヴィッドソンが提示した思考実験。
「ある日、ある男が沼地を散歩していると、突然雷が彼に落ちた。この時、雷は同時に沼にも落ち、沼の分子構造を変化させたことで、瞬く間に落雷を受けた男と同じ身体組成を持つ人物が沼から生まれた。この“スワンプマン(沼男)”は、脳、記憶、振る舞いまで全て落雷を受けた男と同じだ。仕事に行って、同僚と話しても、誰も彼がスワンプマンだと気付かない」
問い:スワンプマンは落雷を受けた人物と同一の人物か?
デイヴィッドソンはNOと答える。物理的に同一で、誰も違いに気付かないとしても、スワンプマンと落雷を受けた男では因果的な歴史を共有していないため、同一ではあり得ないという。たとえば、スワンプマンが落雷を受けた男の友人たちを知っているとしても、スワンプマンは実際に彼らを過去に見たことがあるという事実を持たない。スワンプマンと落雷を受けた男は、それぞれが持つ個人的な歴史が異なるのだ。
一方で、物理的に同一の身体であれば、同一人物と見なす哲学者もいるようだ。さらに、アメリカの哲学者で認知科学者のダニエル・デネットはこの思考実験があまりにも現実離れしているため、意味を成さないとまで語っているという。
とはいえ、脳内情報のコンピューターへのアップロードやテレポーテーションといったものが夢物語ではなくなってきた現代においてはむしろ極めて意義深い思考実験と言うこともできるだろう。
■トムソンのバイオリン奏者
1971年、アメリカの哲学者ジュディス・トムソンが、論文「A Defence of Abortion」(「妊娠中絶の擁護」)で提示した思考実験。
「ある朝、あなたが目を覚ますと、意識を失っているバイオリン奏者とベッドでつながれていることに気付いた。その有名なバイオリン奏者は、致命的な腎臓病を抱えており、音楽愛好家協会があらゆる適合ドナーを探した結果、あなただけが適合した血液を持っていることがわかった。そのため、音楽愛好家協会はあなたを誘拐し、バイオリン奏者の循環器系をあなたにつなぎ、あなたの腎臓がバイオリン奏者の血中にある毒素を取り除くようにした。もし、あなたがバイオリン奏者のプラグを外したら、彼は死ぬ。彼を助けるためには、9カ月間を要し、それまであなたはバイオリン奏者からプラグを外すことができない」
問い:あなたにはバイオリン奏者を助ける義務があるか?
トムソンはNOと答える。もちろんバイオリン奏者には基本的な人権が備わっているが、彼はあなたの体と人生に対する権利を持っていないからだ。ここからトムソンは話を胎児にまで拡げ、胎児も他人の体に対して権利を持っていないため、中絶には問題がないと主張する。
トムソンの議論は極めて微妙な問題をはらんでいるが、確かなことは、あなたにはバイオリン奏者を殺す権利はないということだ。この思考実験においてあなたが持っているのは、バイオリン奏者を生かすためにあなたの体を利用することをやめさせる権利だけである。
さて、7つの哲学的思考実験をご紹介したが、いかがだっただろうか?屁理屈のように聞こえるかもしれないが、実際にあり得ないような極限の状況を想定することで、逆に問題の本質がよく見えるということもあるだろう。実際にここで取り上げた思考実験は、今も多くの哲学者を刺激し続けている。また、哲学者でなくとも、それぞれの思考実験に自分なりの回答を考えてみることもできるはずだ。
参考:「Big Think」、ほか
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