人類の世界観をひっくり返す「7つの哲学的思考実験」が意識高すぎる! メアリーの部屋、快楽機械、沼男… あなたの答えは?
■ビュリダンのロバ
14世紀フランスのスコラ哲学者ジャン・ビュリダンにちなんで名付けられた思考実験。決定論や行き過ぎた合理論に対する反論として提示されたが、出典は定かではないそうだ。
「ここに自由意志を持たず、常に合理的な選択しかできないロバがいる。今、このロバから同じ距離の2地点に全く同じ量の干し草が置かれている。どちらの干し草を選んでも、合理的に得したり、損したりすることはない」
問い:ロバはどちらの干し草を選ぶか?そもそも、このロバは選択することができず、餓死するまで悩み続けるだろうか?
およそ決定というものが、合理的になされるならば、このロバは合理的にどちらの干し草も選べずに飢え死にする。だが、そんなことは実際起こらないだろう。ロバはどちらかの干し草を食べることを決定するはずだ。だとすれば、決定には合理性以外の何らかの要素やランダムな偶然性、あるいは自由意志が含まれていなければならないだろう。
この思考実験の回答は決定論者の間でも意見が分かれている。たとえば、決定論者の1人であるスピノザは、このロバは餓死しないとしているが、ロバはそのまま餓死すると言い切る決定論者もいる。他にも、選択肢にはそれぞれを分ける差異が必ずあると主張する者もいるようだ。
■あなたが救える命
2009年、オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーは、著書『The Life You Can Save: Acting Now to End World Poverty』(邦題『あなたが救える命: 世界の貧困を終わらせるために今すぐできること』勁草書房刊)で提示した思考実験。
「道を歩いていると、湖で溺れている子どもが目に入った。あなたはその子どもから十分に近い場所にいたので、すぐに泳いでいけば助けることができる。ただ、この子どもを助けると、あなたは買ったばかりの高価な靴を台無しにしてしまうことになる」
問い:あなたには子どもを助ける義務はあるか?
シンガーはYESと答える。あなたは溺れている子どもの命を救う義務がある。靴の値段など関係ない。シンガーのこの回答に同意した人は、次の質問にはどう答えるだろうか?
問い:目の前にいる子どもの命と地球の裏側にいる子どもの命に違いはあるか?
シンガーは両者の間には道徳的な違いがないと主張する。ここで高価な靴は、寄付のアナロジーになっている。靴の値段が命を救う上で問題にならないならば、貧困や疾病に苦しむ子どもたちの命を救うために寄付をするべきだというのだ。近くの命を救う義務があるならば、遠くの命も救う義務があるとシンガーは考える。
一方、目の前で溺れている子どもと地球の裏側で餓死しそうな子どもたちの状況は違っているため、異なる義務を課す異なる解決策が必要だという反論もされている。
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