オジー・オズボーンは遺伝子も“人間離れ”していた ― 科学が暴いた「メタルの帝王」の異常体質

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 ヘヴィメタルの帝王にして“狂気の象徴”だったオジー・オズボーン。ステージ上でコウモリの頭を噛みちぎり、酒とドラッグにまみれた日々を送った彼は、誰もが「生き延びられるはずがない」と口をそろえていた。しかし、76歳まで生き抜いたオジーには、音楽と伝説の裏側にもう一つの秘密があった――それは、彼自身の遺伝子である。

「なぜ死ななかったのか」を探るためにゲノム解析を実施

 2010年、オジー・オズボーンは史上初めてゲノム解析を受けたロックスターとなった。関与したのは当時最先端のゲノム企業であるCofactor GenomicsとKnome社。数週間と数万ドルをかけて行われた解析の目的は明確だった。「これだけ酒やドラッグを摂取してきて、なぜ自分はまだ生きているのか?」という本人の純粋な疑問に答えるためだ。

 解析対象となったのは、代謝、依存症、神経系に関わる遺伝子群。その結果は明確な「答え」にはならなかったが、代わりにいくつもの興味深い「兆候」が浮かび上がった。

酒に強すぎる男 ― アルコール分解遺伝子の異常

 注目されたのはADH4(アルコール脱水素酵素4)という遺伝子だ。これは体内でアルコールを分解する酵素を作る役割を持つもので、オジーのADH4近傍には、通常よりもこの酵素の生成効率を高める変異が見つかった。これにより、一般人よりも速く大量の酒を代謝できる体質であることが明らかになった。

 一晩でコニャック数本を空けてもケロリとしていた逸話にも納得がいく。ただし、これは同時に“依存症リスクが6倍に跳ね上がる”という諸刃の剣でもあった。つまり、酒に強ければ強いほど、依存症にもなりやすい体質だったのだ。

 本人はコカイン依存について「そんなに吸ったら誰だって依存する」と笑い飛ばしたというが、科学的にはその背景に確かな理由があったわけである。

神経伝達と感情に影響を与える遺伝子の異常

 ADH4のほかにも、オジーのDNAにはいくつかの「奇妙な仕掛け」が存在していた。たとえばCLTCL1という遺伝子には珍しい2つの変異型があり、これは細胞が物質を吸収・再利用する仕組みに影響を与える。このプロセスは神経細胞の働きに深く関わっており、報告書では「神経系が通常とは大きく異なる再配線をしている」とまで記された。

 また、COMT遺伝子(ドーパミンの調整を行う)に関しては、精神的安定性や衝動性に影響を与える「戦士型」と「心配性型」の両方を併せ持つという稀有な組み合わせが確認された。これにより、オジーの舞台での激しさと、瞬時に冷静さを取り戻すバランス感覚が説明できる可能性もある。

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By Harmony GerberFlickr: Ozzy Osbourne & Blasko, CC BY 2.0, Link

ネアンデルタール人のDNAも確認されるが…

 さらに2010年当時、彼のゲノムにはネアンデルタール人由来のDNAも発見された。これ自体は現代人の多くが持つものであり、科学者にとっては驚きではなかったが、大衆メディアはこぞってこの情報に飛びついた。異端のロックスターに“原始人の血”というラベルは、まさに話題性たっぷりだったからだ。

ゲノムは「答え」ではなく「一部のヒント」

 オジーの遺伝子からは確かに異常な耐性や行動傾向が見て取れた。しかし、それでも彼の音楽的才能や生存力すべてを説明できるものではなかった。科学は「異端者」を研究対象から外しがちである。だが、時にその極端な例こそが新たな洞察を生むのも事実である。

 オジーのような人物は、遺伝子の並びでは語り尽くせない。混沌、狂気、そして爆発的な創造性――その大半は、科学がまだ追いつけない「人間らしさ」に満ちていた。

最後のステージ、そして揺るぎなき遺産

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 オジー・オズボーンは、死の2週間前に故郷バーミンガムで最後のライブを行った。玉座に座り、ブラック・サバスのオリジナルメンバーに囲まれながら、10時間にわたる混沌と祝祭を演じきった。彼のラストインスタグラムは「Back to the Beginning. The Final Show(原点回帰。最後のショー)」という短いメッセージのみ。

 彼の回顧録『Last Rites』は今年10月に出版予定だ。そこには、オジーがこう語っている。

「もし人生をやり直せるとしても、絶対に変えない。酒もドラッグもなかったら、俺はオジーじゃない。常識的なことをやってたら、オジーになんてなれなかった。明日が最後でも、文句は言えないよ。世界を見て、色々なことを経験した。良いことも、悪いことも」

 その人生は、ゲノムに刻まれたほんの一部と、自らの手で書き記した壮大な遺産でできていた。音楽と狂気の狭間に立ち続けた男――それがオジー・オズボーンなのだ。

参考:ZME Science、ほか

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