カニバリズムと食人の真実まとめ! 歴史的な10の事例

 過去にトカナでは、万国共通の禁忌でありながら、今もきっとどこかで密かに行われているであろう「食人」について、これまでに確認された10の例を紹介している。

 共食いの歴史は人類古代の親戚、ホモ・アンテセッサーまでさかのぼり、ネアンデルタール人に至っては人骨を活用して、生活用品を作っていたことがわかっている。しかし、近年まで日常的に人肉食を行っていたフォレ族は、クールー病の流行によってほとんどが病死。生き残った一部のメンバーからは、プリオン病全般に耐性のある遺伝子が検出されたとか。

 信仰に近いものから飢えを凌ぐための現実的な手段として、さらには高価な薬の代用など、一概に食人といえども、その目的はさまざまあるようだ。2020年の記事を再掲する。

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※ こちらの記事は2020年11月22日の記事を再掲しています。

 人間が人間であるために犯してはならない3大タブーは殺人、近親相姦、そして食人だ。しかし世の中で殺人事件がなくなることはなく、近親相姦も密かに行われ、実は食人(カニバリズム)も続いている。決してホラー映画などではなく、具体的に食人がどのように行われているのか、10のケースを紹介してみよう。

1. 先史時代の人類

カニバリズムと食人の真実まとめ! 歴史的な10の事例の画像1
画像は「Live Science」より引用

 人間の共食いは先史時代にさかのぼる。2019年6月に「Journal of Human Evolution」で発表された研究によると、約90万年前、現在のスペインでは、われわれ人類の古代の親戚であるホモ・アンテセッサー(Homo antecessor)が洞窟の中で日常的に食人行為を行っていた形跡が発見された。

 食糧としてのヒト族は適度に栄養価が高く、捕まえやすいため、優先順位の高い獲物の1つとなっていたというのだ。

2. ネアンデルタール人

 より近い祖先としてのネアンデルタール人も時折、食人行為を行っていたことがわかっている。

 スペインのエルシドロン洞窟、フランスのモーラ・ゲルシーの洞窟、そして最近ではベルギーの洞窟など、世界中のいくつかの異なる場所でネアンデルタール人の共食いの証拠が発見されている。さらに食べた後に残った人骨から各種の道具を作って活用していたのだ。

3. ニューギニア島のビアミ族

 このビアミ族は数十年前まで共食いを実践していた種族であったことがわかっている。

 2011年、イギリスの探検家でテレビタレントのピアーズ・ギボン氏が、ニューギニア島の土着民族であるビアミ族を訪問して彼らを取材しているのだが、食人をしていた頃を知っている部族の年長メンバーの話によれば、病に倒れ瀕死の状態にある男の悪口を言っている疑いのある2人の女性を殺し、豚の丸焼きのように火で焼いて食べたケースがあるという。

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ピアーズ・ギボン氏とビアミ族の長 画像は「Live Science」より引用

4. パプアニューギニアのフォレ族

 パプアニューギニアの部族であるフォレ族もまた1950年代まで食人の習慣があった。

 しかし、かつて彼らの間で人肉食が原因で生じる「クールー病」と呼ばれる致命的な脳疾患が風土病として流行し、部族内の多くの人命が失われた経緯がある。

 ところが、部族のすべてのメンバーが死亡したわけではなく、一部のメンバーは、クールー病をはじめ狂牛病などの他の「プリオン病」に耐性のある遺伝子を獲得していたのである。研究者の間では彼らはある種の“進化”を遂げたのだと考えられているということだ。

5. メキシコ北部の先住民・シシメ

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画像は「Live Science」より引用

 2011年に考古学者チームは、メキシコ北部のマゲイ洞窟に集落を形成していたシシメ(Xixime)と呼ばれる先住民が、共食いの痕跡を残した数十の人骨を発見したと報告した。

「ナショナルジオグラフィック」によると、洞窟の中で発見された骨は1400年代初頭にさかのぼるという。シシメは、敵対するグループメンバーの肉を食べることで穀物の収穫量が増えると信じていたということだ。

6. アステカ人

 1428年頃から1521年までの約95年間、北米のメキシコ中央部に栄えたアステカ(アズテック)文明の人々は儀式的な人身御供を行ったことでよく知られているが、彼らが制度として共食いを行っていた証拠もあることが報告されている。犠牲者の遺体は、貴族やコミュニティの主要メンバーに提供されていた可能性が高いそうだ。

 一部の専門家は飢饉の間、アステカ人の間の共食いがより一般的だったかもしれないと示唆している。別の仮説では、共食いは神々とのコミュニケーションの方法であったとも考えられている。

7. ブラジルのワリ族

 ブラジルのワリ族の人々は、彼らの敵対グループのメンバーのみならず、部族内の死者も食べていたという。敵を食べることは、憎しみと怒りを表現する彼らの方法であった。

 そして、1960年代まで彼らの部族内の死者の大部分は食べられていたという。彼らにとって、部族内の死者の肉体を食べることは故人を悼み、尊敬の念を表する彼らの独自の方法であった。米ヴァンダービルト大学の人類学者であるベス・コンクリンは、1年以上ワリと暮らし、1995年に「American Ethnologist」でワリ族の人肉食の歴史について解説している。

8. 16世紀~17世紀の西欧人

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画像は「Live Science」より引用

 スミソニアン協会は18世紀の終わりまで、ヨーロッパ人が薬用として死んだ人間の肉を活用することは珍しくなかったと報告している。たとえば、16世紀の医師であるパラケルススは、人間の血液は健康のために飲めるものであると信じていた。もちろん新鮮な血を飲む機会はめったになかったが、医薬品を買う余裕がない人々は死刑執行の現場で待機し、カップ1杯の死んだ罪人の新鮮な血液に少額の料金を支払っていた。

9. 19世紀の北極探検隊

 遭難した探検隊など決死のサバイバルの果てに人肉食に及んだ者も少なくない。

 最も有名な例の1つは、1845年にカナダの北側と北極圏を結ぶ航路を発見すべく探検に出た「フランクリン遠征」だ。氷河に閉じ込められた2隻の船、HMSエレバス号、HMSテラー号に乗船していた探検隊は、最寄りの交易所まで1600kmを徒歩で移動しようとしたが、残念ながら彼らの努力は無駄に終わった。

 エレバス号の残骸は2014年に、テラー号の残骸は2016年に発見され、探検家の遺体も回収された。遺体の多くの骨に切り傷や破損や骨髄抽出の兆候があり、遭難中に人肉食を行っていた説得力のある証拠となっている。

10. インド・バラナシのアグホリ

 アグホリ(Aghori)はインドのバラナシに住む、ヒンドゥー教の神・シヴァを崇拝する小規模の異端宗派である。

 アグホリは、純粋なものと不純なものの間に違いはないと信じており、死体の上で瞑想したり、人間の頭蓋骨からボウルを作ったりするなど、部外者からすれば不気味な風習を多く持つ。いくつかの報告によると、彼らは儀式的な人肉食も実践しているという。

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画像は「Live Science」より引用

 文明人にとってタブーである人肉食だが、人類史において決して珍しい行為ではなかったことも紛れもない事実なのだ。

参考:「Live Science」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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