完璧な両親殺害計画を実行した秀才少女！蘇った父親が語った衝撃のストーリーとは？

2023.05.12 07:00 文＝仲田しんじ

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　スパルタ教育が招いた悲劇なのか――。完全犯罪を企てて両親を殺害した娘だったが想定外の奇跡が起きて用意周到に画策された将来設計は敢え無く崩れ去ることとなった。

成功した移民家族

　より良い生活を求めて1979年にベトナムからカナダへやって来たホイ・ハン・パンさんと妻のビッチ・ハン・パンさんの夫妻は自動車部品工場などで身を粉にして働き、倹約した生活で貯蓄に励み、その優秀な働きぶりが認められて出世し、移民によるサクセスストーリーの典型例となった。

完璧な両親殺害計画を実行した秀才少女！蘇った父親が語った衝撃のストーリーとは？の画像1 — パン夫妻　「Bugged Space」の記事より

　経済的安定を得た時期に2人の子供を授かったのだが、パン夫妻は移民2世となる子供たちの教育に惜しみなく投資した。

　長男・フェリックスはに名門大学で機械工学を学ばせて自動車設計の道に進ませ、長女・ジェニファーには幼少の頃からピアノとフィギュアスケートを習わせていた。

　ジェニファーは幼い頃からそうした習い事に毎日のように励み、それぞれかなりの熟達を見せてはいたが、ティーンの時期に来ると現実的に考えて両親は長女を薬剤師の道に進ませることにしたのだった。

　高級住宅街の邸宅に住み、高級車2台を乗り回すまでに成功したパン一家にはこの先さらなる繁栄が待っているかに見えていたが、実はジェニファーはその頃から少しばかり“ついていけない”思いを抱いていたのだった。

完璧な両親殺害計画を実行した秀才少女！蘇った父親が語った衝撃のストーリーとは？の画像2 — ジェニファー・パン　画像は「Wikipedia」より

娘の“芝居”が暴かれる

　幼いころから習い事と勉強に浸かりっきりの生活であったジェニファーだったが、高校の高学年になると娘を見守る親の注意の目もわずかばかりに緩んだのかもしれない。ジェニファーは親に内緒で悪友たちとつるむようになった。

　これまでの“スパルタ教育”の反動からなのか、ジェニファーの行いはどんどん乱れたものとなり、ボーイフレンドもできて勉強どころではなくなっていったのだ。

　両親の前でジェニファーは今の自分の状況を嘘で塗り固めていたのだが、高校の最終学年での数学の落第が決まったところで“若気の至り”の一線を越えてしまった。

　背水の陣に立たされたジェニファーは両親の前では必死で取り繕い、無事に高校を卒業して奨学金を得てトロント大学の薬学部に通っているという“芝居”を演じはじめたのである。しかし、実際にはレストランでアルバイトをしながらボーイフレンドのダニエル・ウォンと半同棲生活を送っていた。

完璧な両親殺害計画を実行した秀才少女！蘇った父親が語った衝撃のストーリーとは？の画像3 — ダニエル・ウォン（右）　「Bugged Space」の記事より

　最初は娘の話を頭から信じ込んでいた両親だったが、白衣の類を一度も見たことがないなどの若干の疑問を抱くようにもなった。ある日、母のビッチさんは朝に出かける娘を気づかれないように慎重に尾行してみたことで、数年間にも及ぶ娘の“芝居”が暴かれることになったのだ。

　父親のホイ・ハンさんは娘の二重生活を知って驚くと同時に激怒し、いったんはジェニファーを家から追い出そうとしたものの、ビッチさんの説得で引き留められた。

　父はジェニファーに高校に復学してひとまず卒業し、ボーイフレンドとは縁を切るようにと命じた。従ったふりをしていたジェニファーだったが、その胸の奥では恐るべき完全犯罪が画策されていたのだった。

凄惨な強盗殺人事件

　そして凄惨な強盗殺人事件が起こった。

　ある夜、一家の屋敷に2人の強盗が押し入り寝ていたジェニファーを縛りつけて拘束。家の中の金品を物色し、目覚めた夫妻を地下室に連れ込んで銃撃したのである。

　犯行の間、縛られていながらもなんとか手先でスマホを操作できたジェニファーは警察に通報した。

　通報されたことに気づいた強盗たちは逃げ出し、その後駆けつけた警察によって縛られたジェニファーは無傷のまま救助された。銃で撃たれた夫妻はすぐに病院に運ばれたが絶望的な状態であった。

　なぜジェニファーが殺害されなかったのか、警察は疑問に思ったが、病院に運ばれた妻のビッチさんの死亡が確認された一方、危篤状態にあった夫のホイ・ハンさんの意識が回復したことで、事件は驚くべき展開を見せることになる。

完璧な両親殺害計画を実行した秀才少女！蘇った父親が語った衝撃のストーリーとは？の画像4 — ビッチさんの葬儀　「Bugged Space」の記事より

娘が画策した親殺しの“完全犯罪”

　奇跡的に一命を取り留めたホイ・ハンさんの証言と、ジェニファーらのスマホの通信記録などによって、この事件はジェニファーとダニエルによって企てられた強盗殺人事件であるとの結論に達することになった。

　警察によると、ジェニファーとダニエルはプロの殺し屋を1万ドルで雇って両親を殺害し、その遺産50万ドルを自分たちに相続させる計画を立てて実行に移したということである。

　2014年12月13日、ジェニファーとダニエル・ウォン、身柄が拘束された実行犯のミルヴァガナムとクロフォードの全員が有罪判決を受け、それぞれ25年間仮釈放の可能性がない終身刑が言い渡された。

　ジェニファーが刑務所に連行される直前、父親は「娘のジェニファーが家族に何が起こったのかを考え、正直な人になれることを願っています」と語った。

　一代で成功を成し遂げた両親の期待を浴びて育てられた娘が企てた“完全犯罪”にはショックを禁じ得ないが、立派な両親であるだけにジェニファーはさまざまなプレッシャーを感じていたのだろう。ジェニファーの“芝居”がもう少し早く発覚していたら、このような最悪の事態は回避できたのかもしれない。子供の変化に敏感に気づくことも子育てにおいて重要であることは間違いなさそうだ。