伝説の地底世界「アガルタ」は実在するのか!? 地球空洞説、南極の立ち入り禁止区域…

 どのような物事にも表と裏があるように、この世界も我々が住む地表とは別の地下世界が広がっているのだろうか。地球の奥深くに存在する神秘的な地下王国は古来より“アガルタ”と呼ばれている――。

地下世界の理想都市「アガルタ」の伝説

 古来から数多くの伝説や宗教的物語でこの世とは別の“ユートピア”が語られている。

 広い意味でのユートピア伝説の1つにこの世の中心にある理想都市“アガルタ(Agartha)”についての物語がある。 地球内部の広大な空間で繁栄する高度な科学文明と精神社会を有する理想都市・アガルタは想像上のユートピアなのか、それとも現実に存在する人類未踏の地なのだろうか。

 伝説の地下王国・アガルタについての言説は「地球空洞説(Hollow Earth theory)」に分かちがたく結びついている。地球空洞説では我々の住むこの地球はピンポン玉のように中空であるか、あるは別世界へ繋がっているという世界観で古くから存在している概念だ。

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 地球空洞説について最初に説得力を持つ言及を行ったのは、イギリスの天文学者で「ハレー彗星」の名前の由来であるエドモンド・ハレー(1656-1742)にさかのぼる。

 1692年にハレーは地球には3つの空洞の層があるとする「地球空洞説」を発表した。そしてこの空洞のエリアは明るく、おそらくは居住可能であることを示唆したのである。

 18世紀のスイスの数学者、レオンハルト・オイラー(1707-1783)もまた地球空洞説を提唱したといわれおり、証拠となる文書は残っていないものの、地球内部の高度な文明を照らす、一個の内部太陽を想定していたことが一部で伝えられている。

 そして フランスの秘教哲学者アレクサンドル・サン=ティーヴ・ダルヴェードル(1842-1909)は地球の地下に精神的にも技術的にも進んだ先進文明としてアガルタを定義した。

 1886年に出版した著書『Mission de l’Inde(インドの使命)』の中でダルヴェードルはヒマラヤ山脈の地下深くに巨大な地下都市があり、教皇ブラハトマが統治するアガルタが栄えていると説明している。

 アガルタは技術的にも精神的にも現代文化をはるかに超えた世界であり、住民は地上の人々が長い間忘れていた驚くべき技術を持っており、石に刻まれた膨大な書籍の図書館があるという。そして地上の我々も宗教を通じてそのすべての知恵と富を利用できるようになるだろうと説明した。

 このように地球内部の空洞に超古代から先進文明が繁栄しているという考えは、近代神智学を創唱したヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー(1831-1891)などにも影響を及ぼし、ニューエイジ思想や大衆的オカルティズムの源流になったともいわれている。

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南極飛行中に地下世界に迷い込んだパイロット

 こうした背景を持つアガルタはフィクションの世界にも登場するようになる。

 アメリカン人作家、ウィリス・ジョージ・エマーソン(1856-1918)の1908年の作品『The Smoky God(邦題:地球内部を旅した男』は、オラフ・ヤンセンという名のノルウェー人船員の手記という設定で、ヤンセンの帆船が北極にある“ポータル”を通過して地球内部を探検した物語が描かれている。

 同作によれば空洞の地球内部の中心には白い煙幕に覆われた太陽(スモーキー・ゴッド)が輝き、身長4メートル近い人々が先進技術に囲まれた都市・アガルタで暮らしていた。ここでヤンセンは2年間を過ごしたのである。

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 アメリカ陸軍の大尉、ジョン・クリーブス・シムズJr(1780-1829)は著書『同心円と極地の空洞帯』(1963年刊)で地球空洞説を提唱し、地球は厚さ1300km、北極と南極に直径2300kmの開口部を持つ空洞であり、地表の海はそのまま裏側にまでつづいていると説明した。このシムズの説は、初期の地球空洞説のなかでも最もメジャーな概念になった。

 シムズは自説を裏付けるために北極の探検行を計画したが、費用が集まらなかったため計画は頓挫し、その後1829年に48歳の若さで亡くなった。

 このように理論とフィクションの中で語られてきたアガルタだが、新たな展開が訪れたのは1963年であった。

 アメリカの退役軍人、リチャード・バード氏が出版した『The Hollow Earth(空洞地球)』で当時海軍のパイロットとして作戦に参加していた1947年、南極探検飛行の最中に氷床の大穴の中へ迷いこみ、緑溢れる広大なジャングルを訪れた冒険譚が綴られている。やはり南極に地下世界へ通じる“ポータル”があるのだろうか。

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 南極はナチスのヒトラーも多大な関心を寄せており、ナチス党政権下にも何度も南極探検隊が派遣されている。ナチスの探検隊がもし“ポータル”を発見したとしてもそれを公表するはずはない。そしてもし地底都市・アガルタに接触していたとしてもそれは同じだろう。

 ちなみに2016年にはアメリカ、中国、ロシア、日本などを含む24カ国と欧州連合(EU)の間で、南極に世界最大の海洋保護区が設けられ、35年間立入を禁止する条約が成立している。いわゆる“陰謀論”ではこの条約は南極にある“ポータル”を隠蔽する目的で成立されたと受け止められているようだ。

 はたして南極に地下世界へと通じる“ポータル”があり、そこには理想的な先進文明都市・アガルタが繁栄を誇っているのだろうか。そして南極を舞台にした新たな冒険の幕が開ける日は近いのか注目していきたい。

参考:「UFO Sightings Hotspot」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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