カルト宗教『ヘブンズ・ゲート』のメンバーが集団自殺する前の“身も凍るような最後のビデオメッセージ”

 1997年3月末からのヘール・ボップ彗星の最接近時に集団自決を遂げて消滅した宗教カルト「ヘヴンズ・ゲート」のメンバーは、自決前に最後のビデオメッセージを撮影していた――。

■集団自決直前のビデオメッセージ

 キリスト教とUFOが融合した教義を信仰する宗教団体「ヘヴンズ・ゲート(Heaven’s Gate)」は米カリフォルニア州サンディエゴを拠点に、マーシャル・アップルホワイトとボニー・ネトルスによって1974年に設立された。

 最盛期には数百人の信者を抱えていたヘヴンズ・ゲートだが、その中心的教義は人間はより高次の霊的存在に進化して天国に昇ることができるという信念であったた。アップルホワイトは信者たちに、自分はイエスの再臨であり、時代の終わりが近づいていると語っていた。

マーシャル・アップルホワイト 「Daily Star」の記事より

 ヘール・ボップ彗星が地球に近づいていた1997年3月26日、サンディエゴの警察は郊外の住宅でアップルホワイトを含む同団体の現役メンバー39人の遺体を発見した。彼らはバルビツール酸系の薬物を大量に摂取してから頭からビニール袋をかぶって集団自殺を図った。

 自決の直前、アップルホワイトは集団自殺が「地球から避難する唯一の方法」であると語る自分の姿を録画していた。同氏は、彗星はグループが待ち望んでいたものであり、集団自殺の後、UFOが彼らをより高いレベルの世界に連れて行ってくれると確信していたのである。

 また彼らの行為は自殺ではなく「ネクスト・レベル」に旅立つ行為であったともいわれている。

「Daily Star」の記事より

 そしてこの集団自殺の直前にはアップルホワイトをはじめとするメンバーらがビデオカメラの前で“最後のメッセージ”を語っており、現場にそのビデオテープが残されていたのだ。

 最年少の25歳、元陸軍空挺部隊の若い男性メンバーは「私を助けてくれて、守ってくれたドゥ(アップルホワイト)とタイ(ネトルス)にどれほど感謝しているかと言いたいだけです。クラスメート(信者)は皆、私にとても良くしてくれました」と語った。

画像は「YouTube」より

 最年長の71歳で3人の子どもの母親は「この最後の数時間、私の考えは喜びと驚きだけです」と語った。

 他のメンバーは「私たちがこれからやろうとしていること以上に嬉しいことはない」と述べ、人生で「最も幸せな日」だったと述べている。

 教団の信者たちは3日間に渡って3つのグループに分かれて死亡したと考えられている。彼らは全員、お揃いのナイキの黒いトレーナーとスウェットパンツを着てナイキのシューズを履いていたが、これはナイキブランドを愛していたアップルホワイトの影響であるといわれている。

 この集団自殺で消滅したヘヴンズ・ゲートだけに、その行為は基本的に純粋なものであったと解釈できなくもない。はたして彼らは死後に天国、あるいは「ネクスト・レベル」に旅立つことができたのだろうか。この時期はアメリカはもちろん、日本でもさまざまなカルトまがいの宗教団体が活発に活動していた時期でもある。もちろん信教は自由だが、宗教カルトの中には信者の“生命と財産”に手を伸ばす組織があることを忘れてはならないだろう。

参考:「Daily Star」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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