古代エジプト初代ファラオ「メネス王」は実在したか? 神から王位継承、カバに踏み殺され… 謎多き権力の源泉とは
エジプト最古のファラオといわれているメネス王。上下エジプトを1つの王国に統一し、第1王朝を興した人物とされている。
エジプト神話に登場する天空と太陽の隼の神ホルスから、直接王座を受け継いだ最初の人間の王であり、古代エジプトの歴史は紀元前3千年頃にメネスから始まっている、と聞くとその偉大さがわかるだろう。
それまで分かれていた上下エジプトを中央集権体制に移行させ、政治的統一を図るにはかなり長い時間と労力を要したが、文書や芸術、農業や建設等の技術も飛躍的に開花、発展させたといわれている。
■メネス王とナルメル王は同一人物か?
だが、一方で残念ながらメネスが実在した物証は無きに等しい。現在知られている限り、エジプト史を著述した最初の人物である紀元前3世紀のエジプト高位神官のマネトや、紀元前5世紀の古代ギリシア歴史家ヘロドトスはエジプト初代王の名にメネスと表記している。
ところがメネスの名は現存する遺物には記されておらず、紀元前2400年頃のエジプト第5王朝期に作られた王名表の石碑にも何ら残されてはいないのだ。
1896年に発見された古代エジプトの石の碑文「ナルメルのパレット」には上下エジプトのシンボルを示すナルメル王の姿が描写されており、またその他の物証からもナルメルは確実に実在した人物であることがわかっている。
「ナルメルのパレット」 「Wikipedia」よりパレットには最も初期のものとされる象形文字が刻まれており、放射性炭素年代測定にかけた結果から紀元前3273年~2320年のものだと推定されている。これに古代の伝承や歴史的考察を加味し、専門家らはエジプト統一時期を紀元前3000~2850年の間に仮定しているという。
当時の様子を伝える重要な証拠となるパレットには、頭上に上部エジプトを示す球根状の王冠をかぶっているナルメルが、メイスと呼ばれる古代の打撃用武器を手に、ひざまずかせた敵の下部エジプトの王に殴りかかろうとしている様子が描かれている。
すなわちこの図は、ナルメルが武力を使って2つの上下エジプトを統一したことを示している、と有力視されているのである。
「Wikipedia」より■初代ファラオの権力はどこからもたらされたのか?
これを受けてメネスについてはナルメル=メネス説や、ナルメルによって統一されたエジプトをメネスが継承したとする説や、あるいはナルメルの統一事業をメネスが引き継いで完成させたなどの諸説が存在する。
カア、スコーピオン・キング、ナルメル等の初期王朝時代の複数のファラオを集合的に表しているという説もあり、かなり複雑である。
メネスの実在については現在でも議論の対象であるが、最近のエジプト学ではメネスを第1王朝のファラオであるナルメルと同一とみなすのが主流となっているようだ。先述のヘロドトスは、メネスが上下エジプトを統一後に干拓堤防を築いてナイル川の流れを変え、新しい首都メンフィスを建設した、と記述している。
またマネトによればメネスの治世は62年間に及び、最後はカバに踏み殺された、となんとも驚くべき最期を書き残している。
「Wikipedia」より ヘロドトスもマネトもエジプト統一よりも2000年以上も後の人物であり、そもそもどこまで正しい史実なのか鵜呑みにすることはできないが、後代のエジプトの人々に、この2人が記したメネス王から始まるエジプトの歴史が伝わっていったことは確実であろう。神から王座を受け継いだ初代王は、謎や伝説も全てひっくるめて、まさにヘロドトスの「エジプトはナイルの賜(たまもの)」なのかもしれない。
(文=Maria Rosa.S)
参考:「EWAO」、ほか
※当記事は2018年の記事を再掲しています。
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