生きる屍に…「死んだまま生きた」17歳の少女 ― “歩く死体”になるコタール症候群とは
「死んだまま生きるなんて、今までで一番ヤバイ経験でした――」(英紙「Mirror」より)
そう話すのは、アメリカ・アラバマ州に住むハリー・スミスさん17歳だ。多感な10代の3年間を「自分は死んでいる」と思い込む超レアな奇病とともに生きてきた。

■“歩く死体”になるコタール症候群とは?
コタール症候群、またの名は「歩く死体症候群」。この病は、1880年にフランス人神経学者のジュール・コタールによって発見された。患者は自己否定感の強い抑うつ状態の中、「自分はすでに死んでいる」という奇怪な感覚に取りつかれるという。このような歪められた現実が引き起こされるのは、紡錘状回および扁桃体と呼ばれる脳の機能不全によるもので、双極性障害や統合失調症と同じく、思い込みの激しい精神障害の一種とされている。
「両親が離婚したばかりの頃、私は自分の感情とうまく折り合いがつけられませんでした。そしてある日突然、学校で英語の授業を受けている最中『自分は死んでいる』という奇妙な感覚に支配されたんです。振り払おうとしましたが無駄でした」と、ハリーさんは振り返る。その後、保健室で診てもらったが、異常なしと言われたそうだ。
「学校からの帰り道、墓地を訪ねてみたくなったんです。そこには自分と同じような人たちがいるはずだから――つまり、死人が。親しくなりたいと思ったんですね。でも、通学路には墓地がなかったのでまっすぐ帰宅しました。一晩眠りさえすれば、このシュールな感覚も吹っ切れると思いながら」(ハリー・スミスさん)
だが、体調は回復せず、数日後にはさらに不吉な症状が彼女を襲った。ショッピング中、突然身体が麻痺し、手にしていた洋服すべてを落としてしまったのだ。ハリーさんは、そのまま店から走り出し「自分はクレイジーになった」と絶望したという。違和感はハリーさんの中で次第に大きくなっていった。だんだん学校へは行きづらくなり、友達とも疎遠になり、とうとう昼夜逆転の生活に変わってしまったと話す。
「墓地でピクニックをしたいと思ったり、ホラー映画ばかり見るようになりました。ゾンビを見てると心が落ち着くんです。なぜって、彼らこそ自分の家族に思えたから」(ハリー・スミスさん)
ハリーさんが戸惑っていたのは最初だけだで、徐々に“新しい生活”を受け入れるようになったと話す。
「好きなだけ食べてました。だって、死んでるなら太ることもないでしょ」

■ボーイフレンド、医師、ディズニー映画に救われる
アタマがおかしくなったと思われることを恐れ、すっかりひきこもり状態の生活を送るようになったハリーさん。だが、そんな彼女を救ったのは、ボーイフレンドのジェレミー君だった。彼が真剣にハリーさんの話に耳を傾けてくれたおかげで、父親にも真実を打ち明ける勇気が持てたと話す。父親のフロイドさんもすぐに精神科の受診を勧めたが、結局ハリーさんが受診したのはそれから2年後だった。幸い、医師は彼女の話を聞いてすぐに、コタール症候群であることを見抜いたという。
「ほんとにビックリしました。自分の状態に病名がつくなんて。その後、ネットで検索したら自分と同じ病状の人たちがほかにも存在することわかったんです」(ハリー・スミスさん)
そして、もうひとつ、ハリーさんの心の支えになったのは――ディズニー映画だった。
「リトル・マーメイドやアラジン、眠れる森の美女、バンビ、みんな観ました。そしてジェレミーに言ったんです。『ディズニーを観て、こんなにも心が温かくなるんだったら、私、死んでないよね?』って」(ハリー・スミスさん)
ジェレミー君とディズニーに助けられ、順調に回復していったハリーさん。二人はもうじき結婚する予定だという。そして今後はディズニー・ワールドで働きながら、同病者のサポートもしたいと夢を語っている。
ハリーさん以外にもコタール症候群患者は、2008年にニューヨークに住む53歳の女性が確認されている。彼女は「自分は死んだ魚の臭いがする」と信じこんでいた。また、日本でも2012年に東北大学医学系研究科高次機能障害学分野で69歳の患者が報告されている。こちらのケースは1年間の治療後、症状は消えたが「自分が『生きる屍』だったことは事実」と譲らず、また「同じ病院内に金正日が入院していた」とも話しているそうだ。
参考:「Daily Mail」、「Mirror」、「Mental Floss」ほか
※当記事は2015年の記事を再編集して掲載しています。
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