極限状態で起こる不気味な現象「サードマン症候群」とは?守護天使か幻覚か

 なぜヒーローは絶体絶命の時に現れるのか。死に直面するピンチの時にどこからともなくやって来る“サードマン”とは何者なのか――。

■窮地に陥った時にあらわれる“サードマン”

 1914年から1916年に南極を横断する遠征を行ったイギリスの探検家、アーネスト・シャクルトンは遠征中に「サードマン症候群(Third man syndrome)」を体験したといわれている。

 サードマン症候群(サードマン現象)とは、生死を左右する危険な状況に直面した時に、どこからか第三者(the third man)的な存在が現れて境地に陥っている当人を救うという不思議な現象である。

 シャクルトンの探検隊は南極を横断中に遭難し、シャクルトンは2人の隊員と共に絶望的な状況に直面していたのだが、その時に目に見えない“存在”が彼らに加勢して3人を先導し、大陸に繋がる氷の上を踏破することができたことを後に著書で言及している。これはサードマン症候群だったのだろうか。

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 当時、彼はこの体験を隊員たちに語っていなかったのだが、後に隊員たちも同じ体験をしていたことを告白している。

 この探検隊のケースのように、窮地に陥った時に見知らぬ人物があらわれ、支援や慰めを与え、さらには安全な場所へ導いてくれるという報告が世界中の人々から報告されている。

 しかしこの現象が起こった直後、彼らはほかには誰もそこにいなかったことに気づく。その存在は別の誰か、あるいは何かであり、第三者である“サードマン”であったことを理解するのだ。

 この現象を体験したと主張する主な人々は、探検家、登山家、ダイバー、宇宙飛行士、テロ攻撃の生存者、さらには捕虜など、人生でハイリスクな出来事を経験している人々である。

 トラウマ的な出来事の後、彼らの中の少なくない者が自分を守り希望を与えてくれた人物の存在を感じていたことを思い出すのである。

■脳への電気的刺激で近くに“誰かがいる”感覚

 サードマン症候群にはスピリチュアルな神や宗教が関係していると信じている人々もいるが、スイスの科学者によって電気を使っててんかんの女性の脳のある部分を刺激することで、女性にサードマンの存在を呼び起こす実験が行われている。

 脳のその部位を刺激されるたびに、女性は近くに誰かがいるような気がして顔を横に向けていたが、電流が消えるとすぐに顔を前に戻したのだ。

 冬山で遭難するなど極度の身体的ストレス下では、脳のこの「スイッチ」がオンになり、説明できない何らかの存在を感じ、その局面を乗り越える一助になる可能性があると科学者は考えている。

画像は「Pixabay」より

 登山家のラインホルト・メスナー氏はこの件について「ごく自然なことだと思う。もしそのような危険な状況に身をさらしたら、人間なら誰しも同じような感情を持つだろう」と語っている。

 必要なときに当人を慰めるために人間の脳によって作られたものであれ、天から送られた“守護天使”であれ、それを体験した人たちは、このサードマンが本物であったと主張している。

 一方でサードマンは幻覚の一種だと考える人々もいる。いずれにせよ、それを経験したと主張する人々にとって、サードマンはきわめて現実的に感じられていたことは間違いないようだ。

 まさに“ヒーロー”であり“助っ人”であるこのサードマンを一度は目撃してみたいものだが、当然だが命にかかわる窮地に陥るのは御免こうむりたい。ひょっとするとサードマンに会っても助からなかったケースがあるのかもしれないが、死人に口なしで今のところは確かめる術はなさそうだ。

参考:「LADbible」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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