“パラレルワールド”か“場所の記憶”か? 160年前から忽然と現れては消える邸宅の謎!
美しい村の道沿いに建つ立派な門構えの赤レンガの邸宅は、その荘厳さから見た者に感銘を与えるも、次にその道を通った時には影も形もなくなっていた――。イギリスのサフォークの村に伝わる“現れては消える謎の邸宅”、それが世にも不思議な「ローアム蜃気楼」だ。
■目撃は160年前から
まるで蜃気楼のように忽然と現れては消える謎の邸宅「ローアム蜃気楼(Rougham Mirage)」は、サフォークのローアム・グランドとブラッドフィールド・セント・ジョージとの間に位置する静かな田舎道沿いで目撃される。
最初の目撃は1860年まで遡る。ロバート・パルフリーという地元の男性が、6月の暖かい日に田舎道を歩いていると突然、凍えるような冷気に包まれた。あまりの寒さに震えていると、眼前に花が咲き乱れる庭園とともに大きな赤レンガのジョージアン様式の邸宅が見えたのだ。
この場所にこんな屋敷はなかったはずだと驚いたパルフリーは立ちすくみ、唖然としながら邸宅を見つめていると、まるで空気中に吸い込まれたかのように邸宅は見えなくなり、周囲数マイルにわたって何もない野原が広がっているのだった。パルフリーは自分が見た信じられない光景にとても興奮し、家族にも話したが、何度調べてもそこには何もなかった。
興味深いことにそれから半世紀後の1912年、パルフリーの曾孫であるジェームズ・コボルドが肉屋の友人であるジョージ・ウェイレットと一緒に馬車に乗ってこの田舎道を移動していた時、「ローアム蜃気楼」を目撃した。
彼らもやはり同じように突然冷気に包まれると同時に大きな音を聞いたという。音に驚いた馬が少し暴れてジョージが投げ出されそうになったが、ジェームズは彼の身体を引っ張ってなんとか助けたのだった。
そんな一件があった間にも2人の目に飛び込んできたのは、ジョージ王朝様式で3階建ての赤レンガの邸宅で、中央に長方形、その両側に円形の花壇があり、そこに咲いている花はすべて満開であったという。
花が咲き誇る立派な邸宅だったが、やがて霞がかったように輪郭がぼやけ始め、きれいさっぱりと消えてしまったという。ジェームズはその後も2度、この界隈で「ローアム蜃気楼」を見たということだ。
さらに1926年10月には、ルース・ウィンという名前の若い女性教師が、10歳の生徒と一緒にブラッドフィールド・セント・ジョージの美しい田舎道をのんびりと散歩している最中、緑がかった黄色いレンガ壁の立派な邸宅を目撃した。
当時ルースの家族はまだ同地に引っ越してきたばかりで村の地理に明るくなく、このルートで散歩をするのも初めてだった。これほど大きな邸宅が近くにあるとは聞いておらず、ルースは少し驚いたのだった。
そして翌年の2月か3月、ルースはかつてと同じルートを生徒と一緒に散歩したのだが、驚いたことにどこを見渡してもあの時の邸宅は見つからず、戸惑いながら散歩を終えたというのである。ルースは前年の秋に確かに目撃した大きな邸宅について地元の人々にことあるごとに聞いてみたのだが、誰しも知らないと返すのみだった。ルースが見たものは「ローアム蜃気楼」だったのだろうか。
■次第に地元住民の話題に
1940年代には、村の紳士服店で働いていたエドワード・ベントレーという男性が、ショップのオーナーであるオービン・デイビスと一緒に周辺地域にカタログを配達する途中で「ローアム蜃気楼」を目撃している。
2人がコルビルズグローブと呼ばれる場所で車を走らせていた時、大きく手の込んだ赤レンガ造りでジョージアン様式の邸宅を通り過ぎた。2人ともこの界隈では目にしたことがない邸宅だと思ったが、新しくやって来た裕福な住民ではないかと、カタログを配るためその邸宅へと向けて車を走らせた。
しかし、驚いたことに邸宅は突然霧に包まれ、その後すぐに消えて草と木しかない野原の風景が広がるだけであった。地元の人たちに尋ねてみると、その場所には家など建っていないという答えが返ってくるだけだった。
1976年のある日、ローアムに住んでいたサンドラ・ハードウィックという女性が、地元の青少年クラブで友人と会った後、夕暮れ時に自転車で帰宅の途に就いていた。
自転車を漕いでいると周囲は急に静かになり、鳥の鳴き声が消え、冷たい空気が押し寄せてきた。彼女が身震いしたその瞬間、道路の脇に明るく照らされた大きな赤レンガの邸宅が現れたのだ。
窓は小さく趣があり、誰もが住んでみたいと思う田舎の別荘のような邸宅だったが、なぜか人の気配がなかった。魅力的な外観にもかかわらず、彼女は突然不可解な恐怖感に襲われてできるだけ速く自転車を漕いで走り去った。後日、気になってその場所を訪れた彼女は、邸宅の痕跡すらない風景を眺めるしかなかった。
そして近年では2007年にも「ローアム蜃気楼」の目撃報告がある。同年2月、ローアムからそれほど遠くないグレートバートンに暮らす高齢女性ジャン・バトラムとその夫シドニーは、ちょっとした旅行で地元の村のいくつかをドライブすることにした。
風景画のように美しい田園地帯で車を走らせていると、畑の向こうに大きなジョージアン様式の邸宅があるのを認めた。
ジャンは夫に「素敵なお屋敷だから帰路に近くまで行ってみたい」と伝えたのだった。約束通り旅の帰路に邸宅があった場所まで来てみたのだが、驚いたことに邸宅は影も形もなくなっていたのである。ジャンはスケッチができるほどその邸宅の外観が目に焼きついていたのだが、ローアムの人々に聞いてみると、数人が「ローアム蜃気楼」の話について教えてくれたということだ。
■一時的なタイムスリップなのか?
ここまで紹介してきたのは「ローアム蜃気楼」目撃情報のほんの一部であり、同地域ではきわめて有名な伝承として、数々の体験談が存在する。歴史家で超常現象の研究者であるカール・グローブ氏は次のように述べている。
「1860年以来、少なくとも20の家の目撃報告があったようです。私の見解では、報告されなかった目撃はおそらくはるかに多いでしょう。ローアムのほとんどの人は、邸宅を見たことがある人か、または邸宅を見た人を知っていますが、多くは詳細な情報が不足しています。そして遠方からの訪問者や車で通り抜けるだけの人々は、たとえそれを見たとしても、何ら異常なものではないと思っているはずです」(カール・グローブ氏)
興味深いことに、目撃者が話す邸宅の外観は基本的に同じ、且つそれまで「ローアム蜃気楼」の話を聞いたことがない目撃者が説明する邸宅の外観もきわめて似通っているということだ。
では、同地でいったい何が起きているのか? 「ローアム蜃気楼」を説明する最もミステリアスな理論の1つは、それがいわゆる「タイムスリップ」であるというものだ。時空が希薄なスポットでは、場合により過去の光景を見ることができるという説明である。この場合、人々や建造物、さらには町全体が過去から現れ、しばしば本物の質感に見えるが、次第に薄い空気へと消えていくという。
また、この邸宅が「場所の記憶」と呼ばれるものの実例だとする理論もある。特定の場所に過去の光景が記録されており、それがフィルムのように浮かびあがり何度も再生されるが、あくまでも特定の条件下で特定の人々に向けてのみ示されるということだ。
さらには、パラレルワールド説、幻覚説、誤認説から、嘘やデマというものまで、考察は枚挙に暇がない。ここで実際のところ何が起きているのか、そして、どのように説明できるのか。答えが何であれ、「ローアム蜃気楼」はこの地域に特有の伝承であり、この先もミステリーであり続けるのかもしれない。
参考:「Mysterious Universe」、ほか
※当記事は2022年の記事を再編集して掲載しています。
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2024.10.02 20:00心霊“パラレルワールド”か“場所の記憶”か? 160年前から忽然と現れては消える邸宅の謎!のページです。パラレルワールド、タイムスリップ、ローアム蜃気楼などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで