太平洋に浮かぶ「核の棺」が時限爆弾に!? 米国の杜撰な遺産と気候変動が招く最悪のシナリオ

太平洋に浮かぶ「核の棺」が時限爆弾に!? 米国の杜撰な遺産と気候変動が招く最悪のシナリオの画像1
By US Defense Special Weapons Agency – http://sonicbomb.com/albums/album61/runit.jpg, Public Domain, Link

 白い砂浜に不気味に鎮座する、直径115メートルの巨大なコンクリートの円盤。地元マーシャル諸島の人々はそれを「(The Tomb)」と呼ぶ。

 一見すると、ただの巨大なマンホールの蓋か、あるいはSF映画に出てくる宇宙船の発着場のようにも見える。だがその下には、冷戦時代の狂気が生んだ約8万4千立方メートルもの放射性廃棄物が眠っているのだ。

 その中には、わずかな粒子で人を死に至らしめる猛毒プルトニウム239も含まれており、その半減期はなんと2万4100年。

 この「墓」はいま、気候変動による海面上昇と老朽化によって崩壊の危機に瀕している。太平洋の楽園が再び放射能の地獄と化す日は近いのかもしれない。

「人類のため」と称して島を爆撃した裏切り

 物語は、第二次世界大戦後のアメリカによる「裏切り」から始まる。

 国連からマーシャル諸島の統治を委任された米国は、住民を保護する義務を負っていたはずだった。しかし、彼らが選んだのは保護ではなく「爆撃」だった。

 1946年、米海軍はビキニ環礁の住民に対し、「人類のため、そして戦争を終わらせるため」という美辞麗句を並べて立ち退きを求めた。そしてその後の12年間で、計67回もの核実験を強行したのだ。

 その爆発規模の合計は、なんと広島型原爆が12年間毎日1.6個ずつ爆発した計算になるというから正気の沙汰ではない。

 特に1954年の水爆実験「キャッスル・ブラボー」は、広島の1000倍の威力を持ち、計算ミスによって死の灰を近隣の島々に降り注がせた。子供たちは空から降ってくる白い灰を雪だと思って遊んだという。このエピソードだけで胸が締め付けられるが、米国はその後、被曝した住民を対象に極秘の医学的研究「プロジェクト4.1」を行っていたのだから、言葉を失う。

太平洋に浮かぶ「核の棺」が時限爆弾に!? 米国の杜撰な遺産と気候変動が招く最悪のシナリオの画像2
ブラボー実験のキノコ雲 United States Department of Energy – US gov, パブリック・ドメイン, リンクによる

裸同然でプルトニウムを扱った兵士たち

 1970年代に入り、国際的な圧力もあって米国は汚染除去に乗り出した。しかし、その実態はあまりに杜撰で、コストカット優先の「やっつけ仕事」だった。

 本来なら専門家が行うべき作業を、予算削減を理由に軍の兵士たちに押し付けたのだ。

 当時の写真や証言は衝撃的だ。防護服などろくになく、短パンにブーツ、日除けの帽子という軽装で、プルトニウムを含んだ瓦礫を素手で扱っていたという。放射性物質が舞う中、マスクすらしていない兵士もいた。

 上層部は「レントゲン撮影程度の影響しかない」と嘘をつき、安全をアピールするためのプロパガンダ映画撮影の時だけ、フル装備の防護服を着せたという証言もある。

 当然ながら、作業に従事した数千人の兵士たちの多くは、後に癌や骨の病気に苦しむことになった。

コンクリートの蓋の下は「底なし」だった

 こうして集められた汚染土壌は、ルニット島にある核実験のクレーターに放り込まれ、セメントと混ぜて固められた。そして最後に、厚さ45センチのコンクリートドームで蓋をした。これが現在の「ルニット・ドーム」、通称「墓」である。

 しかし、この処理には致命的な欠陥があった。

 クレーターの底にはコンクリートの裏打ちがなく、多孔質のサンゴ岩がそのまま露出しているのだ。つまり、海水は底から自由に出入りできる状態なのである。

 満潮時には地下水が上昇し、放射性廃棄物を浸し、引潮と共に汚染物質を海へと流し出す。建設当時から「ザル」状態だったわけだ。

 さらに気候変動による海面上昇が追い打ちをかけている。

 ドームのコンクリートにはひび割れが目立ち始め、嵐が来れば波がドームを洗う。もし巨大な台風が直撃すれば、ドームそのものが崩壊し、中のプルトニウムが太平洋全域にばら撒かれるという悪夢のシナリオも現実味を帯びている。

 

「もう汚れているから関係ない」という米国の開き直り

 マーシャル諸島政府は激怒している。「ゴミは自分たちのものではない、アメリカのものだ」と。

 しかし米国側の態度は冷淡だ。1986年の独立協定で「すべての請求権は解決済み」とし、ドームの管理はマーシャル諸島政府の責任だと主張している。

 さらにエネルギー省は、「漏れていることは認めるが、周囲の海(ラグーン)はすでにもっと酷く汚染されているから、今さら漏れても大した影響はない(希釈される)」という、信じがたい論理を展開している。

「どうせ汚い部屋なんだから、ゴミを少し散らかしても変わらないだろう」と言われているようなものだ。

 マーシャル諸島の人々は、今も癌や先天性欠損症に苦しみ、汚染された伝統的な食材を食べられず、輸入加工食品による糖尿病にも悩まされている。

 そして今、地球温暖化という新たな敵が、かつての冷戦の遺物をこじ開けようとしている。

 解決策は、より強固なシェルターを作るか、廃棄物をすべて掘り出して安全な場所へ移すしかない。しかし、どちらも莫大な費用がかかるため、具体的な計画は進んでいない。

 太平洋の真ん中で、ヒビ割れたコンクリートの棺桶が静かに時を刻んでいる。それが開かれるとき、中から出てくるのはゾンビではなく、人類がかつて封印したはずの「見えない死神」だ。人類はその時、また「想定外」という言葉を使うのだろうか。

参考:ZME Science、ほか

関連キーワード:, ,
TOCANA編集部

TOCANA/トカナ|UFO、UMA、心霊、予言など好奇心を刺激するオカルトニュースメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

太平洋に浮かぶ「核の棺」が時限爆弾に!? 米国の杜撰な遺産と気候変動が招く最悪のシナリオのページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで