そこは宇宙船の墓場… ISSの落下地点「ポイント・ネモ」を実際に泳いだ探検家が語る、美しくも恐ろしい“到達不能極”のリアル

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 1998年から人類の叡智の結晶として地球を見守り続けてきた国際宇宙ステーション(ISS)。

 だが、何事にも終わりが来るように、老朽化したこの巨大な宇宙船も2031年には引退し、海へと落下させられる運命にある。

 その「水葬」の場所に選ばれたのが、地球上で最も陸地から遠い場所、「ポイント・ネモ」、通称「宇宙船の墓場」。

 そこは一体どんな場所なのか? そして、そこへ実際に行き、泳いでしまった命知らずな探検家親子の証言をもとに、この孤独な海域のリアルに迫ってみたい。

地球上で最も孤立した場所「到達不能極」

 ポイント・ネモは、南太平洋のど真ん中に位置する「海洋到達不能極」だ。

 最も近い陸地(デューシー島など)でさえ約2700キロメートルも離れている。東京からグアムやサイパンくらいまで行かないと陸がない、といえばその絶望的な距離感が伝わるだろうか。

 ここにいる人間にとって「最も近い人類」は、船で通りかかる他人ではなく、上空400キロを飛んでいるISSの宇宙飛行士たちだと言われている。

 そんな場所だからこそ、NASAはここを落下地点に選んだ。誰の頭上にも破片を落とす心配がない、完璧な「ゴミ捨て場」なのだ。

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「南緯50度以下に神はいない」過酷すぎる到達ミッション

 普通なら近づこうとも思わないこの場所に、2024年、あえて挑んだ探検家がいる。クリス・ブラウン氏とミカ・ブラウン氏の親子だ。彼らは船に揺られて10日間、ポイント・ネモを目指した。

 ミカ氏は、サイエンスメディアIFL Scienceのインタビューで、船長から言われた衝撃的な言葉を明かしている。

「南緯40度を越えると法はなくなり、50度を越えると神はいなくなる」

 ポイント・ネモがあるのは南緯48度~49度付近。まさに神の加護すら届かない領域だ。

 波の高さは6~8メートルにも達し、一軒家よりも高い波が13秒ごとに襲ってくる。船酔いと嘔吐の連続だったという彼らの旅は、冒険というより苦行に近い。

深さ4000メートルの海の色は「玉虫色の青」

 ようやくたどり着いたポイント・ネモ。そこは水深約4000メートルの深海が広がる世界だ。クリスとミカは、この「宇宙船の墓場」で泳ぐことにした。

 正直、想像するだけで足がすくむ。ミカ氏も「深い水が苦手だから、ゴーグルは着けなかった。水の中に顔を入れたくなかったんだ」と語っている。賢明な判断だ。

 一方で、父のクリス氏はその光景に魅了されたようだ。

「大西洋のような黒や深緑色を想像していたが、驚いたことにファンタスティックな青だった。見下ろすと、ほとんど玉虫色(イリデッセント)のような青なんだ。驚くほど美しかったよ」

 底知れぬ深淵は、意外にも明るく、そして美しい青だったのだ。

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英国人探検家クリス・ブラウン氏と息子のミカ氏。2024年3月、ポイント・ネモにて
Photo by Chris Brown / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

ISSの最期に相応しい場所

 2031年、ISSは大気圏で燃え尽きなかった残骸とともに、この美しくも恐ろしい「青」の中に沈んでいくことになる。

 そこは人間が軽々しく立ち入るべきではない、地球で最も静寂に包まれた場所だ。

 宇宙開発の最前線を走ったISSが、最終的に「神もいない」とされる地球の果てで眠りにつくというのは、なんとも詩的でSFチックな結末ではないだろうか。

 我々一般人がそこへ行くことはまずないだろうが、Googleマップで南太平洋の真ん中を拡大し、その深い青さに思いを馳せてみるのも、悪くない夜の過ごし方かもしれない。

参考:IFL Science、ほか

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