被曝後「気分が良くなった」という残酷な罠… チェルノブイリの消防士たちを襲った“歩く幽霊”状態の凄惨な最期

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 1986年4月26日午前2時。人類史上最悪の原発事故であるチェルノブイリ原子力発電所の4号炉爆発からわずか1時間後、隣接するプリピャチ市の病院は、想像を絶する地獄絵図と化していた。

 運ばれてきた発電所の職員や消防士たちの姿を見た看護師たちは、初期の情報不足から「ただのひどい火傷」だと思い込み、ソ連の伝統的な火傷治療である「牛乳で洗い流す」という処置を行った。

 しかし、彼らの体を蝕んでいたのは火や熱ではなく、目に見えない「致死量の放射線」だったのだ。

 当時の医療スタッフの証言と、放射線が人体を内側から破壊する「歩く幽霊(ウォーキング・ゴースト)」のメカニズムを解説する。

水ぶくれのない火傷と「赤ワイン色」に染まった顔

 事故直後の4号炉の屋上で、消防士たちはわずか5分以内で致死量(最大20シーベルト=胸部X線16万回分)の放射線を浴びていた。

 消防隊長のペトル・フメル氏は、当時のドキュメンタリーでこう回想している。「廊下を走っていると、床が動いているように感じた。役に立たない布製のマスクをむしり取ると、口から血の噴水が飛び出した」

 病院に続々と運び込まれてくる男たちの顔には、ある共通する「恐ろしい兆候」が刻まれていた。当時看護師として働いていたリュドミラ・ジュライさんはこう証言する。

「彼らの顔は真っ赤に焼けただれていました。しかし、熱による火傷ではないため、水ぶくれは一切ありません。顔がただ深紅、あるいはブルゴーニュ(赤ワイン)色に染まっていたのです」

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「ニュークリア・タン(核の日焼け)」が意味する死の宣告

 この症状は、後に「ニュークリア・タン(核の日焼け)」と呼ばれるようになった。

 日焼けと聞けば大したことないように思えるが、実はこの症状が出た時点で「死」はほぼ確定している。

 致死量のガンマ線やベータ線が細胞のDNAを物理的に粉砕すると、大量の細胞死が起こる。顔は血管が集中しているため、体が破壊された組織を修復しようと血管を異常に拡張させ、ヒスタミンを放出する。その結果、顔全体が異常なまでに赤く腫れ上がるのだ。

 つまり、この「深紅の顔」は、人体が内側から崩壊していることのサインなのである。

痛みが消える「歩く幽霊(ウォーキング・ゴースト)」フェーズの残酷さ

 さらに不気味で残酷なのが、病院に着いた消防士たちの多くが、ある時点から「気分が良くなった」と言い始めたことだ。

 これは急性放射線障害における「歩く幽霊(ウォーキング・ゴースト)」フェーズと呼ばれる現象だ。強烈な初期症状(嘔吐や発熱)が一時的に収まり、まるで回復したかのような錯覚に陥る。

 しかし、彼らのDNAはすでに破壊されており、古い細胞が死んでも、新しい細胞を作り出す(細胞分裂する)ことができない。数日後には皮膚が剥がれ落ち、内臓が次々とシャットダウンし、現代のどんな医療技術をもってしても助けることはできない。

 彼らはまさに「死んでいるのに歩いている」状態だったのだ。

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UnsplashVladyslav Cherkasenkoより

鉛の棺と、放射線に打ち勝つ野生動物

 消防士のワシリー・イグナテンコ氏(当時25歳)は、この凄惨な経過をたどって亡くなった一人だ。妻の証言によれば、彼の遺体は放射線の影響で異常に腫れ上がり、靴も礼服も着せることができなかったという。

 彼らの遺体は死後も強烈な放射線を放っていたため、一般の人々を守るために「亜鉛とコンクリート」の分厚い棺に密封されて埋葬された。

 事故から40年。人間が消えたチェルノブイリの立ち入り禁止区域では、皮肉なことに野生動物たちが爆発的に繁殖している。オオカミやヒグマ、ヨーロッパバイソンが闊歩し、置き去りにされた犬の末裔たちがたくましく生きている。

「放射線の脅威よりも、人間の存在が消えたことの方が、自然にとってはプラスだった」と語る進化生物学者の言葉は、我々人類に重い十字架を突きつけている。

参考:UNILAD、ほか

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