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――エカキで作家・マンガ家、旅人でもある小暮満寿雄が世界のアートのコネタ・裏話をお届けする!

 今回も前回に引き続き、現在上野国立博物館で開催されている「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」で、その目玉となっている「白菜」と「肉」について紹介しよう。

 門外不出の本作が海外に出るのは画期的なことだ。おそらくは1945年に中国大陸を離れ、台湾にたどりついて以来、海外に出るのは初めてのことだろう。

 上野では、「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」が引き続き開催されているものの、「白菜」の展示はすでに終了。「肉」の展示は九州国立博物館で10月7日~20日までの2週間限定開催(展覧会は11月30日まで)を予定

 「肉」と「白菜」は、収蔵点数70万点を超える故宮博物院の中でも一番人気の作品だ。故宮博物院においては、一番人気の2人組ユニットアイドルといった位置づけになるかもしれない。正しい呼び名は「翠玉白菜(すいぎょくはくさい)」と「肉形石(にっけいせき)」という。


■「翠玉白菜」の魅力

「翠玉白菜」を見た人が一様に言うのは「思ったより小さい」ということだ。だが何度見ても同じように、「こんなに小さかったかな」と感じるのは、大きさよりも細工の記憶の方が先立ってしまうからだろう。

「翠玉白菜」は、白菜とキリギリスが表現されているだけにもかかかわらず、なかなかのスケール感である。これでは大きさがわからなくなるのも無理からぬこと。白菜のヒダの透明感、白菜の葉に体をうずめるキリギリスのリアルな存在感は比類ないものだ。

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小暮氏・著『堪能故宮in台北』より

 注目したいのは、翡翠の原石が持っていた色合いを十分に活かしていることだろう。白い部分は白菜の根元。緑の部分は白菜の葉と、キリギリスとイナゴを1匹ずつ彫り込んでいる。自然の造形物をここまで活かした職人芸…と言いたいところだが、実は完全に原石を活かしたわけではなく、葉の微妙な移り変わり部分は着色したというのが実際のところだ。

 この小さい方のイナゴだが、15年前のリニューアル以前は「キリギリス」と表示されていた。つまり、キリギリスが2匹いるとされていたのだ。しかし、最近になって故宮博物院が高名な昆虫学者に鑑定を依頼したところ、上にいる小さな方の1匹はイナゴ…つまり、バッタの仲間であるというのがわかったのである。

 専門の学者がそう断言するというのは、昆虫の持つ特徴を正確に彫っているからだという。両者の違いを左図の拙画で確認していただければ幸いだ。

hakusai03.jpg
小暮氏・著『堪能故宮in台北』より

 イナゴという昆虫は時に大量発生し、農作物を根こそぎ食い荒らすことで知られている。あの「三国志」の中にもイナゴによる大飢饉の場面があり、清朝中国を舞台にした小説、パールバックの「大地」でも、空を覆うイナゴの大群の場面が印象的だ。

 そんな恐ろしい存在を、どうして縁起物であるはずの「玉器」に彫り込むのか? それは、イナゴがとんでもない害虫である一方、不作の年には貴重なタンパク源として食料にされてきた歴史があるからだろう。そして繁殖力が強く、またキリギリスも同様であるため、子孫繁栄の象徴としてモチーフに選ばれてきたようだ。

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