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~【ジャーナリスト渋井哲也のひねくれ社会学】都市伝説よりも手ごわいのは、事実だと思われているニセモノの通説ではないだろうか? このシリーズでは実体験・取材に基づき、怪しげな情報に関する個人的な見解を述べる~

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 兵庫県神戸市長田区長田天神町の雑木林で、ビニール袋に入った市立名倉小1年の女児(6)の切断遺体が見つかり、9月24日、兵庫県警長田署捜査本部は死体遺棄の疑いで、近くに住む職業不詳の男(47)を逮捕しました。遺体が見つかったのは、女児の自宅から100メートルにある雑木林の中です。被疑者の自宅も近くの文化住宅です。加害者と被害者の住む場所、そして遺棄現場すべてが、日常の生活圏域で起きていました。さらに、死体を遺棄したビニール袋の中に、実名が書かれた診察券が入っていました。犯行を隠さずに、わざわざ診察券を置いたのかどうかはわかりませんが、どこか不自然な気がします。

 さて、当初、の報道では「朝日、毎日、読売新聞」は匿名報道。共同通信は実名報道をしていました。その後、どの報道機関も実名報道となりますが、なぜ、このように判断が別れたのでしょうか?


■公権力に対する監視

 日本の犯罪報道では、原則的に逮捕段階で実名報道となります。理由としてよく言われているのは、「公権力に対する監視の側面がある」ということです。これはつまり捜査機関の権力行使が適切に行われているかどうか監視するということ。ただし、被疑者が少年の場合は、「少年法の精神」により個人が特定されないようにしています。また、心身喪失や心神耗弱などで責任能力が疑われる場合も匿名となっています。


■逮捕=犯罪者ではないのに、なぜ?

 もちろん、逮捕段階での実名報道には批判もあります。マスメディアで逮捕情報が流れると、視聴者や読者は「その人がやったのだろう」という印象を持ちます。「警察は間違ったことをしない」という思い込みがまだまだあるからでしょう。

「逮捕されたことを報道しただけで、有罪かどうかは書いていない」という言い訳が成り立たないわけでもないですが、逮捕後の処遇を書いているのは、社会的な関心が高い事件だけです。「権力監視」という割には、マスコミは逮捕が正当なものかどうかをチェックしているわけではありません。

 確かに、刑事裁判での一審の有罪率は99.9%です。しかし、逮捕→送検→起訴の順番で司法手続きがなされているので、逮捕された人がすべて起訴されるわけではなく、検察側によって「起訴猶予、不起訴」という判断が下されることもあるのです。

 実際に、起訴される率も時代によって変化しています。80年代は70%台と高い起訴率でした。それから徐々に下がっていき、90年代には50%台。そして2000年に入ってからは40%台前後となりました。しかも、ほとんどが略式起訴(軽い法律違反で対象者が罪を認めている場合に、簡易裁判所に刑罰を決めてもらうように求めること)。しかし、公判となると、80~90年代は4%台でしたが、2000年を過ぎてからは6%前後とやや増加しています。データからもわかるとおり 「逮捕=起訴 逮捕=犯罪者」ではないのです。

 つまり、逮捕された人は、何の罪もなかったとしても、実名報道によって社会的制裁を受けることになるのです。もちろん、起訴されなかったからといって、罪を犯していないとは限りませんし、この社会的制裁が減刑の理由にもなったります。

 話を戻しますと、日本の場合は、逮捕段階で実名報道です。逮捕されたのに実名が報道されない場合は、少年による犯行以外に、責任能力が疑われる場合だということになります。そうした場合、現場の取材記者の中には「マルセイか…」と残念がる人がいます。「マルセイ」とは警察用語で、「精神障害者や精神異常者」のことを指し、報道の現場でもその言葉を使ったりします。「マルセイ」が絡んだ事件となると少年事件と同様に、警察は公式発表を控えます。そうなると、報道の数も減っていき、取材記者が記事を発表する場も減るのです。

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